今回、弊社のインターン生として、「自己実現消費の時代 伸びる会社の矛盾経営のすすめ‐業績よりもES(人間性尊重)経営」というテーマのもと、沼田青年会議所5月第1例会へ同行させていただきました。

私が理想とする職場は、上司部下のような立場関係なく、互いに尊重し、助け合い、話が飛び交うような場所であり、そんなところで働きたいという思いがありました。
しかし、それは理想論に過ぎず、競争が激しい経済社会では、お金や名誉に結びつくような結果がすべてであり、実現は困難なものかと思っていました。

しかしながら驚いたことに、この講演のお話の中では、人間性を尊重するような私が理想とする経営を実践していく企業が、これからの時代は伸びていくというのです。
つまり、目先の業績ばかりを追いかける経営では、社会で生き残っていくのが困難な時代に移り変わっているということです。

今、消費者が社会に求めているものは、変わってきています。
1990年、日本の高度経済成長期を終えたころから、機能的な価値だけでなく、自己実現可能な、自分らしさを表すことができるものが求められています。

そんな時代だからこそ、そういった価値を生み出す立場にある人が自己実現型の人間を目指す必要があります。


自己実現についてマズローの欲求5段階説が挙げられていますが

自社の商品サービスの購入を通して、その自己実現を満たすというビジネスモデルを作っている中小企業も出てきています。

消費者は、自己実現可能な消費を促す商品サービスに共感をして、購入するのです。
そういった商品を生み出す組織づくりに取り組む会社について2社、金野から紹介いたしました。

これらの事例に共通していえるのは、共同体(コミュニティ)意識です。
コミュニティ意識を高めるには自己肯定・信頼・貢献意識の3つの視点が必要です。
それらを常に満たすのは難しいことではあります。大切なのは、その意識に高低が起きたときにその都度、原因について考えることです。

心理学者アルフレッド・アドラーの言葉に
「『われわれの周りには常に他者があり、われわれは他者と結びついて生きている』
他者との結びつきを意識する感覚を「共同体感覚」と措定し、生きる喜びや幸福は他者との関係からしか得ることができない。自分自身の幸福と人類の幸福に最も貢献するのは共同体感覚である。」があります。

そのような共同体感覚を高め合える職場こそが幸せな職場、すなわちES組織となるのです。

また、そうした個人の変容の中で、感じる幸福と、企業の生産性とは関連性があるといいます。

「幸福優位の7つの法則」の著者、グッド・シンク創業者兼CEOショーン・エイカーをはじめとする、225件の研究について分析を試みたところ、「幸福感とパフォーマンスの関係」について、幸福感の高い社員の生産性は平均で31%、創造性は3倍高いという結果になりました。これは、企業の場合、従業員が幸福であることは利益も高いことを意味します。

では、人間性を尊重する経営(ES経営)をするためには何から取り組めばよいのでしょうか?
それは上司と部下、または社員同士の「関係の質」を高めていくことから始まります。

関係の質が高まると、互いに信頼が生まれ、尊重し合うことができ、
部下が「上司のためになにができるかな?」と主体的に考えはじめ、それを行動に移すことで、より良い結果を得る。部下の自信・自己受容に繋がり、そしてまた関係の質が高まる、というサイクルなのです。

この「関係性の質の変化」について考える時、大切な視点があります。それは、「成人発達理論」というもので、人間には五つの発達段階がある、というものです。
発達心理学者であり、話題の書籍『ティール組織』にも登場するドン・ベック氏が、「進化を音楽に例えるなら、発達段階は一定の周波数で振動している音符のようなものだ。人は様々な音符をたどって演奏できる弦楽器である。どこまでの範囲の音符を演奏できるかは、自分たちが調整できる弦の張り具合による」と語っているように、人間は、自身の意志次第でいかようにも何歳になっても成長・進化していくものである、という考えを理解することです。
発達段階は、”言葉を獲得したての子供”である第一段階から始まり、利己的(自分の欲求優先)な第二段階、組織や社会の基準に則った行動が基本となる”他者依存”の第三段階、と変化していくと言います。そして、自分なりの価値観を意識し自律的な状態である第四段階、更には”相互依存”の第五段階、へと変容をたどりますが、これらは一足飛びに段階をうつることはなく、らせん状に、段階を経て変化していくのです。
このように変容していく個々の結びつきが、組織における関係性であり、その関係性の質を良い状態へと変化させるということは、すなわち、お互いの成長段階を理解し、自己認識を深め、その意識構造に基づいた体験・経験を重ねて行く、ということが必要です。
そこで重要になってくるのが、「自己の弱さをさらけだすことができる環境・信頼感があるかどうか」という点です。
弱さをさらけだす、というのは、例えばチャレンジにおいて失敗したことを報告できるかどうか、自身がうまくいっていないことを共有できる空気感があるかどうか、課題として抱えていることを開示できる相手がいるかどうか、といった点です。
職場での自分と、それ以外の自分、というものを分けた思考においては、長い時間いる職場において弱さを隠すことになり、当然、息苦しさや居づらさというものを感じるでしょう。
しかし、弱さをさらけだすことで、次なるチャレンジをするための見識を得たり、抱える課題に対する支援を受けたりすることが、結果的には自身の成長・進化を後押しすることにもなり、個の変容と組織の変化を促すことにつながるのです。

これらを整理すると、ES組織開発は以下の3つの側面をおさえておくことが重要です。
①職場コミュニティ:信頼で結ばれたコミュニティとして、弱さをさらけだすことができる環境づくり
②成長に導くコミュニティとしてのあり方:ESを軸としたクレドが信頼感のある関係性の質を高め、コミュニティとして育み、新たな企業文化を生む
③仕事を通しての自己成長意欲:ESを軸としたクレドを継続的に実践することで、地に足のついた個々の変容を促すことができる

個人の変容と組織の発達段階は、互いに影響し合って成長していく。
この点を理解した上で、まずはリーダーである社長自身が変容していくこと。
リーダーがどのような世界を見ているか次第で、組織の進化が決まるのだ、という点を認識し、社長自身が社員との関わり方や地域との関わり方において、様々な変容を自らが巻き起こして欲しいという言葉で、矢萩の講演が終わりました。

今回講演のお話をする場を設けていただいた沼田青年会議所 経営戦略委員会の皆様、ありがとうございました。

ある経営者の方は「ES経営には段階を踏む必要があり、その段階ごとに、社員と対話をしたり、呼びかける内容を変えていくように意識する必要があるのですね。」と仰っていました。

個人的な話ですが、都内から新幹線で上毛高原駅へ降り立ち、澄んだ清々しい空気にワクワクし、会場へ向かう車中の間、圧倒されるほどの緑ゆたかな山々や清らかに流れる川を見て、つかの間ですがリフレッシュすることができました!