<有限会社人事・労務 設立20周年記念セミナー基調講演より>

働きやすい職場はどのように作られるのか?
イノベーティブで協働的な組織のあり方とその実践について研究を行っている埼玉大学大学院の宇田川元一先生の講話をもとに、コントロールを排除した、より自然体な経営スタイル「自然経営」のあり方について考えてみた。

第1回:人がつながるプラットホーム、コラボレーティブコミュニティとは?
第2回:”勇気を持たなくても言い出せる”組織の作り方
第3回:「貢献感」で会社と社員をつなぐ
第4回:”弱さ”とはつまり、”関わることのできる余地”のことである
第5回:弱さが強さに変わる組織

 

”勇気を持たなくても言い出せる”組織のつくり方 <自然経営シリーズ 第2回>

●今の多くの組織は、言いたいことが言いづらい組織のカタチになっている
イノベーションの本質はコラボレーションにある。そして、恊働する組織としてコラボレーティブコミュニティを紹介いただいた。
(コラボレーティブコミュニティについては前回の記事参照

宇田川先生のお話の中で、コラボレーティブコミュニティのポイントとして「言いづらいことも言える風土づくり」が挙げられた。
組織における対話の重要性を語られることは多い。
もっと言えば雑談だ。言いたい時に言いたいことが言えること、必要なときに必要なことを言えることはコラボレーションにおいても大切だ。
一方で、今の多くの組織がとっているピラミッド型の組織は、組織の構造的に、「言うべきことを言えなくて当然」なカタチになっていると宇田川先生は指摘する。

ピラミッド型組織の特徴はコントロールに向いているコントロール型の組織である点である。
ではなぜコントロールできるのか?それは、部下が一カ所に依存する組織のカタチにある。

今、多くの企業で組織の活性化を目的に、トップダウンではなくボトムアップの組織にしようとする試みが行われているが、それは、組織の構造的にかなり難しいと言えるだろう。

 

●勇気を持たなくても言い出せる組織
では、どうすれば言いたいことを言える組織を作れるだろうか?
宇田川先生の答えは「依存先を増やす」だ。

一カ所に依存する仕組みが言い出しづらい環境を作っているとすれば、依存先を増やすことができれば相対的に依存度は下がる。
大切なポイントは“意識ではなく、環境(しくみ)にアプローチ”している点だ。(そして、これは自然経営におけるポイントでもある。)

人間の意識を変えることは簡単ではない。
組織において人間の行動を変えられる(コントロールできる)のは、強制力があるからであり、多くの場合、大きなストレスがかかっている。
一方、強い意識をもて!依存的な人間は駄目だ!と教育するのではなく、一カ所に集中した依存度を分散させるアプローチはスタッフへのストレスも少ないと言えるだろう。

 

●依存先を増やすことでスタッフの自由度は上がる
では、どうすれば上司以外の依存先を増やすことができるのだろうか?
例としてあげられたのは、社内外のネットワークをもつことだ。

自分の所属する部署以外のコミュニティに参加することができれば、上司以外に相談をしたりアドバイスをもらう存在を作ることができる。
この点、社会の流れは「兼業」を勧める方向に一気に動いている点に注目してほしい。
兼業が一般的になれば、必然的に、上司(一つの会社)への依存度は下がる。
スタッフの視点から見ると、組織の中では、よりコントロールを恐れずに働くことができるようになる。(いざとなれば逃げられるのだから!※積極的な意味で)一方で会社側からすると、これまでのコントロール重視のスタッフに負担(ストレス)がかかる企業経営のあり方では、スタッフの求心力を失う可能性が高い。
依存度が低くなるということは自由度が高くなるということで、それは、人の流動化が始まることを意味する。
では、人はどのように動いていくだろうか?(その答えも自然が教えてくれる。)
おそらく危険な場所から心地よい場所へと人は動いていくだろう。
一カ所への依存が危険であることを人々は感覚的に感じ取っている。だとすれば、人が動いていく先にある組織とは、宇田川先生が言うように、組織内外のネットワークを構築することを、上司・同僚がサポートしてくれる組織である可能性が高い。

縛り付けてコントロールするのではなく、放っておいても帰ってきたいと思えるレベル(森のような豊かさ)、その組織に所属することが安心につながる組織を、人々は今、求めているのかもしれない。

著者:原田真吾 WorldShihtコミュニケーター/社会保険労務士有資格者/