脱ピラミッド型組織のチームのあり方ということで、5回に分けてお話を聞いてきました。
これまでとは組織のあり方が変わってきているというのは間違いなく経営者の皆さんは感じていると思うのですが、これからの組織や働き方が果たしてどのようになっていくのか、お話を進めていきたいと思います。

畑中:最近、「自然経営」ということでよくいろいろな活動をされていますけれども、武井社長が理想と思われている自然経営はどう描かれているのかというお話をいただけますか?

武井:最近、ホラクラシーであったりティール型組織だったり、複雑系マネジメントとか自己組織化とか自律分散型組織とか、いろいろな言葉が生まれてきていると思うのですけれども、それは基本的には同じ方向だと感じています。

こちらではなくこちらと大きく分ける。ヒエラルキーとかピラミッドみたいに「あれをやれ、これをやれ」という方向ではなくて、みんなで考えていく。偉いとか偉くないとかは特に要らないではないかという方向性の経営とか組織づくりを総称して「自然」と書いて「自然(じねん)経営」と最近呼び始めたのですけれども、この自然という言葉を使った意図というか、この言葉も仲間内でみんなでどんな言葉がいいかとディスカッションしながら考えたのです。

僕は、個人的に組織づくりの参考にしているのが植物とか農業とかの自然のものでして、特に自然農法を考えられた福岡正信さんが僕はすごく好きです。耕さない、肥料をあげない、雑草を抜かない。でも、それを繰り返していくと収穫高がすごいことになる。しかも、雑草を刈らないとか手をかけないので、労働生産性が実はめちゃくちゃ高い。

畑中:それは、そうですよね。

武井:でも、そういう考え方こそが長い目で見たときに実は合理性がすごく高いし、肥料をあげない食べ物のほうが力強く伸びるし、農薬で虫を殺したり、病気をああだこうだとしないもののほうが力強く生命力を持って育ってくるというのはそのとおりだと思いました。

会社も、人間もですけれども、自然の一部なので、そういう育み方というか、無理やり会社をこうしようというコントロールではなくて、植物を見守るかのようにどう育っていくかを邪魔しないアプローチが素敵だと思って、こういう言葉を当て込んだのです。

これを具体的にどう実現していくかは、われわれがやっている取り組みもまだ一つの方法論でしかないと思っていますし、会社の規模とか業種業態とか、働いている人は一人一人個性があって違うわけなので、一つ一つの組織がいろいろな違う取り組みでうまく回っていっていいと思っています。

冒頭に矢萩さんがおっしゃっていましたけれども、必要性があって生まれるのが組織というか、働き方とかだと思っているのです。例えば、われわれみたいな上司や部下は要らないという考え方を今例えば東南アジアのぐいぐい伸びている国に持って行っても「それどころではない。取りあえず働いてお金を稼ぐことが今幸せなのだ」という国もあるでしょうから、正しさはすごく流動的で、必要性に応じて生まれるべきかなと思っています。

畑中:矢萩先生は、まただいぶ立場が違うと思うのですけれども、今後のこれからの組織、会社なのかもわからないですけれども、どういう方向性に行くというのは。

矢萩:自然の経営は、これからわれわれ日本の中では必要かなとは思います。ただ、そこに至るまでに結構難しい会社もたくさんあるので、まずは、自然で経営する会社を立ち上げていくのか、部門をちゃんと切り離してそこがやっていったり、社長がフラットで権威とかが働かない、それこそ給料はこの会社では関係ないなどと言えるような組織に自分が身を置いてみて、その中でいろいろ気付きが出てくるのではないかと思うのです。

あとは、これから新しくつくる会社などは本当に武井社長の言うような自然経営的なところをまず頭の中に少し置いて、今、それこそうちのメンバーとも相談員をやっているけれども、実際にNPOだとか非営利などはなんとなくこれに近い流れがあるわけで、そこを意識していくのが大切なのかなと思うのです。

私も武井社長の言うように農業のところをやっていくと自然が分かってくるし、空手などもやっています。そうすると自然の力を出す方法を教えてくれます。例えば息を吹いたり、吸うのも吐くほうが力が入ったり、人間の体の自然を引き出すこつを空手などでは教えてくれるのだけれども、それと同じように組織の中で力を引き出すこつが武井社長のような方といろいろな対話を通じて社長さんもマスターもしていくべきだし、そういうのを伝える役割は出てくるのかなとは思います。

畑中:これからの時代の組織のことをずっとお話ししてきたのですが、私、個人的には、当然ですけれども、かなり一人一人が本当に自立して働かないといけないような時代になってくるのかなと思うのです。これから働く、特に若者たちに向かって、どういう働き方をしてください、どういう能力を付けなさい、何か大切なことはこれですというのはありますか。

今までのピラミッド組織なのか、自然組織なのか、方向性はこうですというのは多分きょうの全体のお話の中では方向性としてはあると思うのですけれども、今までは組織的な話が多かったと思うのですけれども、個人としての求められる資質とかやらないといけないこととかを最後にお聞きしたいと思います。武井社長はいかがですか。

武井:なるほど。僕は就職したことがない男なので、今の学生さんとかこれから社会に出る人のイメージが全然僕自身つかないので、あまりいいアドバイスができない気もするのです。

畑中:働き方です。

武井:好きなようにしていただきたいというのが第一なのですけれども、本来、生きるというのはすごく自由なものだと思うのです。気が向いたら、あした別に海外に行っても誰も文句を言わないですし、会社を首になっても別に日本だけで400万事業者とかがあるわけで、起業するハードルも下がっていますし、何だったらYouTuberで食べられたり、メルカリで物を売って食べられたり。

畑中:最近、YouTuberは人気ランキングの2位とか3位ですからね。

武井:働き方どころか生き方みたいなのが何でもありになってきているわけです。自分らしく生きるだけで生きていける、食べられる時代になってきている気がするので、僕は「あれをやれ、これをやれ」というのは。僕自身もずっと考えながらやっていることはどんどん変わっていきますし、来年の自分がどうなっているのかは分からないのです。問い続けてほしいという気はします。自分は何がしたいのだろうとか自分は何をしているときに幸せと感じるとか自分はこういうことが得意なのだと。自分との対話というか、それがすごく価値があるのではないかと思います。

畑中:確かにわれわれの時代だと自由ではあったと思うのですけれども、大学を卒業したら就職活動はこの時期からやってと言って選択肢がある中での自由だったのです。今はYouTuberも含めて自由だと言われると、問い続けないと確かに大変かなと思います。

武井:高校生起業家とかも出てきてしまっていますし、本当に何でもありですよね。小学生でプログラミングがばんばんできる人もいたり。

畑中:環境的には全部できますものね。

武井:あと、自分との対話だけではなくて、人間は自分のことが一番分からなかったりするぐらい盲目的だと思うので、いろいろな方との対話を通じて自分を相対的に見ていくとか。でも他の人と対話すること自体も昔よりもしやすくなっていると思うのです。例えばSNSだったり、ネットでいろいろな人とつながれたり、立場を超えていろいろな方と会話ができるようになっていると思うので、そういうものを最大活用していただきたいと思います。

畑中:矢萩先生は。

矢萩:同じような話なのですけれども、武井社長がお話しした好きなようにしたらいいのではないかという話があったのですが、本当にそうかなと思うのです。よく話をするのが、江戸しぐさの話で「遊び」の語源というのは「明日備」から来ているという話で、あすに備えるというところから来ているというのがあります。それがたまたま仕事であって、あすに備えるために仕事があるわけだから、働き方改革や生き方改革はそのようなところにあるのかなとは思うのです。

その中で一つあるのは、マーケティングの世界ではUXが今いろいろなところで言われていますけれども、働くほうでもEXというエンプロイー・エクスペリエンスがあるのではないかと思います。これは、今、武井社長がお話しした好きなようにしたらいいというところです。でも自分一人だとなかなかEXは難しくて、それはつくり上げていくというか、そのためにはいろいろな人と協力して、いろいろな人の助けを借りて、または自分一人でやるよりも周りの人とやったほうがより新しい豊かな体験が働く中でもできるというところに人が集まってくるし、働き方などもそんなところにあるのではないかと思うのです。

会社の中で社長さんを中心としてそれぞれの人たちのEXが高まるのはどんなときなのか。一日、朝起きて会社に行くまで、会社に行ってからいろいろと職場の中で起きること。また、お客さんと会う。一日を終えて会社に戻る。その間の中で、一人一人が働く上でどんな働く体験価値を得られるのかといった一人ではできないものをお互いの中でみんなでつくり上げていくようなところをこれからの職場の中でデザインしていくというか、大切になってくるのではないかと思っています。そこで働くという意味がより人生を豊かにしていくためにあるのかなと思っています。

畑中:最後に、愚問かもしれないのですけれども、AIがどんどん活躍するようになったら働くことはなくなるのか、また別の形になるのか。武井社長はどう思われますか。

武井:人間にしかできないことは絶対残っていくと思うのです。われわれは、ITをやっていると、AIは基本的には因数分解というか、抽象度を下げたところの情報を解析してパターンを認識して自動的に答えを出す。でも、人間にしか今のところまだできないことは抽象度を上げて考えていくことだと思っています。

例えばUXとかもそうですけれども、今までは例えばユーザーインターフェースみたいな使い勝手から今度は顧客体験になって、今度はその上にライフスタイルがあってと抽象度を上げたものになっていっていますよね。例えばコカ・コーラでも、飲み物を売っているのではなくて楽しさを売っているのだ、エンターテインメントだという考え方だったり。そういうことは機械にはできないことだと思っているので、そういうふうに仕事はどんどん変わっていくのは変わっていくと思います。エネルギー革命みたいなことが起これば、例えば工場を動かすエネルギー自体も太陽光で自動化できたら全てが自動化されるし、お金がかからなくなる。

例えば人間が趣味で釣りをやっていますと。でも釣りは昔は仕事でしたとか。昔の仕事が今の趣味になる。例えば今はプログラミングが仕事ですけれども、将来的にはそれが趣味になるときとか、そういうふうにどんどんスライドしていくのだろうと思います。人間がいる以上は、人間は人間関係があって初めて人たるというか。ということは、そこに必ず何か価値の交換みたいなものが生まれると思うので、何かが仕事になっていくのだろうと思います。

畑中:矢萩先生、別にAIではなくてもいいのですけれども、中期ぐらいの未来の働き方はどう思われますか。

矢萩:AIのいろいろなデータにしてもディープラーニングにしても、匠の技といって、それをまねて、その中で読み込んでいってそれなりのものができたとしても、人間は多分どこかで飽きてしまうのではないかと思うのです。結局は、匠の技といっても匠がいなくなったらそこから進化しないわけで、そこのデータは過去のものではないですか。ずっとそのままで、先ほど武井社長が言ったように刺激がなくなってくるから、昔、匠の技だったものをずっとやっているわけだから、多分3年も5年もすれば飽きてくるので、誰かがこのAIのロボットよりももっと面白いものをつくれないのかなと思うと、またそこで何かをやり始めると思うのです。

そうすると、それが仕事になるし、またそれがAIに搭載されていく。でも、またもっと新しいものをやりたいとなったらまた仕事を生み出すという形になっていく気がするのです。AIができても、そういった人間の楽しさとか感情を揺さぶるものは新しいものを人間は求めてくるので、そこにまた仕事が発生してくるのではないかとは思います。

畑中:30年後は全然分からないですね。
どうもありがとうございました。

矢萩:ありがとうございました。

武井:ありがとうございました。