資料52、53、54

 

「越境人財とはどのような人のことをいうのですか?」とたまに質問されることがあります。そのような質問をいただいたとき、いつもヤマト運輸の松本さんという女性社員の話をします。

ヤマト運輸では、「まごころ便」という、地域に密着したサービスを展開しています。

このビジネスモデルは、買い物難民のお客様との接点より「この問題をなんとか解消したい」というおもいを抱き、生まれました。

 

村・町に住んでいる人が孤独死してしまう。町の商店街がどんどん廃れていく。地域や行政は悩みを抱えていました。両者の悩みや問題を解決するためのビジネスモデルは、松本さんという、当時セールスドライバーだった女性が生み出していったというお話です。

松本さんの配達先に、88歳のおばあちゃん宅があり、荷物を運ぶといつも元気に出てきてくれたそうです。そのおばあちゃんは、都心にいる息子さんからの小包を楽しみに待っていました。だから、いつも喜んで、車のエンジン音を聞くと玄関まで出てきて荷物を受取るのが習慣になっていました。

しかしある日、おばあちゃんは玄関まで出てきませんでした。

「おかしいな」と思いながらも、おばあちゃんが「荷物はそこに置いていってね」と言うので、そのまま玄関に置いていきました。

 

その数日後、おばあちゃんの家の前を通ると葬儀の準備をしていた。

死後3日目に発見されたといいます。それはちょうど、松本さんが配達した日の晩のことでした。松本さんは「自分が声をかければおばあちゃんは死ななくてすんだんじゃないか」と自分を責めたこともあったそうです。松本さんはこの経験から「じゃあどうすればいいんだろう、私に出来ることはいったい何かな」と夜毎悩んで考えました。

ある夜、考えた末、「お客様の買い物難民を防止するために、安否確認も兼ねてやったらどうか」というアイデアが思い浮かび、早速上司に相談、提案しました。ところが、「うちはボランティア会社じゃないから」と却下されてしまった。

しかし松本さんは、それでも諦めずに何度も何度も挑戦しました。すると、周りの上司や同僚からは、「事業費の捻出と個人情報の問題、こういった問題をどうするの」というように問題点を指摘してくれるように変化していきました。「困ったな、なんとかしなきゃいけないな」ということで、いろいろなつながりを通して、様々なところに聞きまわって、県立大学の先生から「それだったら、お役所さんとつながってそこからの補助金だとか、または商店街からの補助金だとか、そういうのを使えば、この事業費の捻出という問題や個人情報の問題もクリア出来るんじゃないの」というアドバイスをもらい、この三方良しの考え方に至ったといいます。

まさに、越境人財の在り方そのものです。まず、現場で起きた事件から、この人の内面が変わっていった。それと、社内への粘り強い呼びかけの末、社会へのつながりが生まれ、連携・コラボレーションが成り立っていった。

このビジネスモデルはそのようなプロセスを経て完成し、今では全国にこの事業が広がっています。