「脱ピラミッド型組織のチームとその働き方」について、ダイヤモンドメディア株式会社 代表取締役 武井浩三さんにお話を伺いました。
(コメンテーター:矢萩大輔 /聞き手:畑中義雄)

まず、テーマの一つ目として、ダイヤモンドメディアという非常にユニークで面白い会社が、一体どのような会社なのかということについて、この10年の歩みも含め、特に人事の部分でお話しいただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。

武井:ダイヤモンドメディアの武井と申します。
会社は、ITの会社で、不動産のサービスを提供していたり、人材サービスを提供していたりするのですけれども、今、30名ぐらいの規模でやっております。

どこから言ったら面白いのでしょうか。人事面は、例えば給料はみんな話し合って勝手に決めていくとか、採用も部署ごとに勝手に採用して、合わなければ勝手に辞めさせます。だから、僕が面接をしたことがないという感じです。働く時間、場所、休みが自由です。社労士さんの前で言っていいのかなという感じですけれども。それから全員の給料もオープンですし、全部オープンで、社長と役員を毎年選挙をして決め直します。

それから、最近は会社の株も会社の中に組合をつくってそこにほとんど移しちゃって、僕が会社を好き勝手にできない環境をつくったり、特にこの5年ぐらいいろいろと新しい取り組みをしてきたのですけれども、最初に立ち上げた10年前から、一切、上司や部下を持たずにピラミッドではなくフラットで、誰が偉いとか偉くないとかはいいではないか、みんなでいい仕事をしてみんなで幸せになろうぜ!というようなざっくりとしたところから始めていって、ニーズが増えるごとに少しずつ仕組み化して今に至るという感じでございます。

畑中:まさにテーマの脱ピラミッド型で本当にフラットですね。ただ、我々からするとそれで本当に組織として成立しているのかと。10年以上、業績を伸ばしながらこられているのですけれども、社労士や人事コンサルの立場からしたら突っ込みどころが満載だと思うのですが、いかがですか?

矢萩:今の労働基準法からするといろいろとあるのかもしれませんが、今、それこそインディペンデント・コントラクターといって、いろいろな働き方の人がいるし、本当に社員でも、また外部でも、一つの目的だったり思いだったりといったところでつながって仕事をするのが当たり前になってきているので、未来型の組織というのはそういったところになってくるのではないかと思っています。

畑中:フラットな組織のイメージについてはどうですか?今までの組織が本当にこれから変わっていくちょっと未来の組織のイメージというのは?

矢萩:できれば、フラット型にしていくべきだとは私は思っています。今までの高度成長期からの右肩上がりの中では、階層型の組織は環境に合っていて、それが一番効率が良く、また人々が幸せになるという理にかなっていたのです。しかし今の1990年代からの20年間というのは本当に経済成長が止まっています。そういった中では今までの組織ではやはり無理があるのかなと感じています。

もちろん、そこで働いている人たちが幸せを感じているのであればそれでも良いのですが、やはり今、多くの企業がイノベーションを何とか起こさなければいけないと、社員の士気やモチベーションが下がってきている中でどうすればいいのかというふうになってくると、今までと同じやり方では新しい結果は出てこないわけだから、そこは武井社長の会社から学ぶべき点というのはたくさんあるのではないかなと思います。
畑中:そもそも武井社長は、なぜフラットな組織にしようかなと、もう10年ぐらい前の話だと思うのですけれども、そのきっかけはなぜそう思われたのですか?

武井:実は今の会社は2社目の起業で、1回目の起業でいきなり失敗して会社をつぶしたんですよね。そのときは4人ぐらいの小さい規模でやっていたので、友達とやっていて、そこには上司も部下もありませんでした。会社は失敗してしまいましたけれども、そういうものだと思っていました。

畑中:最初から上司や部下がない形で組織づくりをしていたのですか?

武井:していこうと思っていましたね。一回、やはり失敗して、そこから会社は何のためにあるんだっけ?、そもそも仕事は何のためにするのだろう?というようなものを考えるきっかけになって、そこからいろいろな経営の本だったり、組織づくりとかそういうものを勉強し始めました。

そうしたら、幾つかの本、例えば、リカルド・セムラーの『奇跡の経営』ですとか、ゲイリー・ハメルの『経営の未来』とか、ああいう今までの運営方法ではない企業がちらほら目に留まりました。例えばセムコは働く時間などをみんな好きに決めていいとか、ゴア&アソシエイツは60年以上前から上司や部下がないとか。それはいいなと。

ただ、そういう本の中に具体的な運営方法とか細かいところがどうなっているのかというのは全然載っていませんでした。しかも、大きい会社だと、やはり会社が丸ごとそういう運営ができているかというと必ずしもそうではない部分もありました。パタゴニアさんとかいろいろと他にもありますけれども、今われわれがもう一回会社をやり直すのだったら純度100%でそういう組織づくりをやってみたいなというところから始まりましたね。

畑中:今の時代に合ってきたなという感覚はありますか?

武井:そうですね。10年前に始めた頃は前例がほとんどないですし。

畑中:本当にないと思います。

武井:給料はみんなで話し合って決めていますとか上司や部下はありませんと言うと、20代半ばだとかだったので、大学のサークルみたいなノリだねというようにちょっとさげすんで見られていましたけれども、2017年ぐらいから本当に急にいろいろと話を聞きたいと企業から呼ばれて講演をさせてもらったり、いろいろな講演会とかメディアから取材が来たり、海外の企業が見学に来たりしました。

われわれはずっと同じことをやっているのに今さら何だ?何だ?という感じでしたけれども、やはり明らかに世の中が、先ほど矢萩さんがおっしゃったような今までのように「あれをやれ、これをやれ」と言われて「はい。分かりました」というシンプルな構造では社会の環境に対応できないのだろうなと頭では分かっていても、ではどうしたらいいかという具体的なものが分からないから「ちょっとダイヤモンドメディアさん、話を聞かせて」と。

畑中:思ったら、もう10年もやっている。そんな感じですよね。矢萩先生は、もう20年以上、経営を見てきていますけれども、時代と何が一番合っているのか、何がすごいというか、今、注目されているということだと思われますか?

矢萩:武井さんのところがやっている組織というのは、多くの人がやりたいけれども、できないところがあるのかなと思うのです。社会保険労務士の先生方などもいろいろなところで専門家だから話を聞くと、うちはまだできないという話になるのです。

そこには、社長自体の権限を手放したくないとか、自分自身の給与とかもそういうのもある意味でみんなに公開しながら、逆に社長は給与を取り過ぎだよと言われることも出てくるわけではないですか。だから、そこはなかなか今までの昔ながらの経営をしている人にとっては厳しいだろうし、手放していくことの勇気だとか、この後、もしかしたら、武井社長からも見える化の話も出ると思うのですが、そういったところを踏み切るのはまずトップが難しいとは思いますよね。

でも、そういう形を取っていかないと今の経済環境に合わないし、そもそも武井社長が言ったように会社は一体何のためにあるのかという、皆での幸せというのを話していましたけれども、そういったある意味での働く人の新しい体験価値、エンプロイー・エクスペリエンスといいましょうか、そういったところが非常に大切になってくるわけで、その部分をどう会社の中でつくり出していくのかは一つの大きなこれからの課題なのではないかと思います。