ダイバーシティ新時代・はたらくカタチが変わる
人事制度を取りまく社会環境が今までとはがらっと変わりました。その変化のキーワードは、“ダイバーシティ”と“人間性尊重(ES)”です。弊社が業界に先駆けてESに関わる書籍を世に出したのが2005年。あれから十数年で大きく変化したと感じています。
それは、男性中心・残業も厭わない正社員主体の人事制度から、多様な人材の多様な働き方、個人のライフスタイルと融合した価値観を重視した新たな“はたらくカタチ”を人事制度へと反映していくということです。
労働力人口は、これまでのような制約のない正社員を主体とした人材よりも、何らかの制約を抱えた人材の割合が増加傾向にあります。旧来の組織では、変化の激しい不確実性を伴う時代を乗り越えていくことが難しくなってしまう企業も出てくるのです。
私はこれらの問題を変える大きなカギが、ダイバーシティだと考えています。そしてそれをマネジメントとしてまわしていくための手段が「目標管理」です。
もちろん私は今でも、「成果主義」は日本の多くの企業の組織風土には馴染まないと思っています。そして、成果のみを測定する個人主体の目標管理は組織のつながりをバラバラにしてしまうと考えます。しかし、これからお伝えする目標管理は今までのものとは180度違います。成果を測定するための目標管理というよりもむしろ、組織を通した人間的な成長、個人のライフスタイルの質の向上、組織のつながり力を強化するための新たな目標管理、と表現した方が良いでしょう。
これから二回にわたり、そのような考え方が生まれるに至った背景についてお伝えしていきます。
■背景1:キャリアの視点
この15年ほどで、“企業”と“組織”とそこで働く“人材”との関係は、上下関係から横並びの対等な関係に変わってきています。年功序列や終身雇用といった日本型の雇用慣行が崩れ、就職さえすれば毎年昇給し定年までの生活が保障されるという時代ではなくなりました。
厚労省の調べによると、7割近くの人が「自分で職業生活設計を考えていきたい」と答えており、「会社で職業生活を提示して欲しい」を圧倒的に上回ります。日本型雇用慣行においては会社が従業員の生活を保障する力が強かった分、キャリアについては会社に委ねる傾向が強くありました。しかし今、会社は社員の生活を保障することはできなくなりました。社員にとってはより主体性が求められる時代といえます。自己の責任において、自らのキャリアを選択し築いていていくことが求められているのです。
より自律を求め、自らのキャリアを築きたいと考える人が増えてきているということは、企業にとっては、社員の働き方の価値観やライフスタイルに合わせたキャリアデザインの場が求められているとも言えます。会社と社員の関係が、上下関係から対等の関係に近づいてきた今、会社側が個人のライフスタイルに寄り添うことができなければ、良質な人材確保し続けることは難しくなるでしょう。