「マネーからLIFEを取り戻す」: ピーター・カーニック氏と新井和宏氏による特別トークイベントレポート
2024年3月12日、「ソースプリンシプル」の提唱者であるピーター・カーニック氏が来日。ピーター氏の来日を記念し、株式会社eumoの新井和宏氏をお招きしたトークイベントを開催致しました。
ピーター氏は、「マネーからLIFE(ライフ)を取り戻すマネーワーク」を実践し続けています。新井氏は、「儲けるための投資ではなく、応援するための投資」を目指した「鎌倉投信」を設立。その後運用成績が日本一になりました。その後、ニセコで「共感コミュニティ通貨eumo」をリリースしています。
モデレーターの吉原史郎氏は、ピーター氏の著書の翻訳者であり、ソースプリンシプルの考え方を日本に広めている方です。もう一人のモデレーター、行政書士の矢尾板初美氏は非営利組織の設立・事務局サポートを積極的に行っています。
彼らの間で交わされる対話から、「マネーとライフに『いのち』を吹き込む」ヒントを探っていきました。
■第1部 基礎編
第1部では、モデレーターの吉原史郎氏から「LIFEから生まれるソース・プリンシプル」の基本的情報をわかりやすく解説していただきました。
そもそもソースプリンシプルとは、人々が「愛してやまないこと」を取り戻すための実践知です。
誰もが生まれながらに人生のソースであり、「愛してやまないこと」を創作できる素質を持っています。ソースプリンシプルにおける創作の範囲は、ビジネスだけではなく、夫婦関係や趣味、日常の些細なことなど多岐に及んでいます。
吉原氏は「人生も仕事も創作活動であり、エネルギーの質感である」と話し、これを感じてもらうために、ペアワークを実行。参加者に二人一組になってもらい、自分の人生にどんなエネルギーがめぐっているかを話し合う時間を取りました。
ペアワークの後、吉原氏は「誰もが人生のソースである」ということについて言及します。
「ソース・プリンシプルとは、『個人から花開く』ことを可能にする実践的なレンズです。ピーターとの探究では、常に『愛してやまないことを仕事にしていますか?』という問いかけをしていました。皆さんには愛してやまない趣味がありますか。それを仕事にしないのはなぜでしょうか?」
こう質問されると、参加者は無言で考え込んでいました。
一部の才能のある人ではなく、「誰もが愛してやまないことを創作できる素質がある」という人間観は、従来のビジネスや人間関係の捉え方を大きく変えるものです。
肩書など固定的な役職に基づく関係ではなく、「誰もが自分の人生を創作しているソースである」という見方は、これまでの発想を転換させ、「いのちの営み」に目を向けさせる力がありました。
参加者が自分の中に眠る「愛してやまないもの」の存在に気づいたところで、講義は新井氏にバトンタッチします。
■第2部 探究ダイアログ ~「LIFEから生まれるソース・プリンシプル」編
第2部は、新井和宏氏がスピーカーとなり、共感通貨「eumo」を作るに至った経緯を話します。
新井氏は、外資系金融会社などで活躍する金融マンでしたが、「儲けるための投資ではなく、応援するための投資」を目指し「鎌倉投信」を設立。運用成績は日本一になります。さらに、「格差を助長する仕事だけで自分の人生を終わらせない」と決意して、株式会社eumoを立ち上げ、共感コミュニティ通貨eumoをリリースしています。
この仕組みを作った新井氏は、「お金とは何か」という本質に触れました。
「日本では、そもそもお金とは何なのかということをほとんど教えません。家庭では『お金を大切にしなさい』と言われますが、何を持って大切にするのかは伝えきれていないのです。将来のために貯めることばかりで、使い方をレクチャーできません」
新井氏が、「自分のためではなく、人のために使う方が幸せになれる。より良い循環にすると自分に戻ってくる」ということを体感してもらうために始めたのが、eumoの取り組みです。
eumoは電子マネーに似ていますが、現地でしか使えないことや有効期限が3ヶ月に設定されているなど、いくつかの特徴を持ちます。失効前に使ってもらうことでお金を循環させ、地域経済を活性化する狙いがある他、期限が切れたeumoは「共助」の財布に入り、社会貢献活動のために使われます。
新井氏は「eumoにはギフト機能があり、『ありがとう』や応援の気持ちが上乗せできます。災害時には、被災したオーナーを直接応援することも可能です。eumoは『公助』や『自助』だけでは抜け落ちてしまう『共助の財布』としても使えると思っています。共助のお金が循環する仕組みができれば、まじめにがんばっている人や、困っている人に必ずお金が届くようになります」と話します。
共感という貨幣換算できない価値を資本として育む「eumo」の取り組みは、確実に全国に広がってきています。
■第3部 探究ダイアログ~マネーから「いのち」を取り戻し、マネーとライフに「いのち」を吹き込む編~
第3部は、同じテーマで独自の実践方法を磨いてきたピーター・カーニック氏と新井和宏氏のトークセッションです。「マネーからどのように命を取り戻していったのか」という問いに対して、ピーター氏はこう話します。
「皆さん、頑張って生活費を稼いだらどのタイミングで好きなことができるのでしょうか? もしかしたら年金をもらう段階かもしれませんね。ところで皆さんの中には、9時から17時まで『生活費を稼ぐために働いている』という方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?」
ピーター氏が問いかけると、参加者からパラパラと手が挙がりました。ピーター氏が世界を赴き、同じ質問をすると大勢が手を挙げるそうです。
ピーター氏「多くの方が頑張って勉強していい大学に入って、資格を取って仕事をします。ハムスターのように。そこから降りることを夢見て、回し車を回し続けます。なぜかと言ったらそういう教育を受けてきたからです。
私も『十分なお金があれば大人として一人前で自由になれる』と無意識のうちに思い込んで、回し車に乗ってしまいました。
けれども、いくら稼いでも十分ということはなくてずっと乗り続けてしまいます。
別の人は安心安全、または幸せを求めて回しています。自分の価値を確認したくて回している人もいますね。でも回っているだけだから、どこにも行きつかないのです。私はお金と人の関わり方を変えるシステムを考えました」
ピーター氏は、私たちの教育のシステムが350年前の産業革命の時代に、労働者を工場に集めるために考え出されたと話します。
そこから、「自分の食い扶持は稼がないといけない」「働かざるもの食うべからず」という価値観が民衆の間に広がっていきます。
ピーター氏は、多くの人々がマネーに対して様々な投影をしており、しかもそれについて無自覚であることを発見しました。
その結果、本来自分が持っているアイデンティティを失いロボットのように働いている人が増えています。
ピーター氏は、マネーに対する思い込みを捨て、愛してやまないことを行うことの重要性を説きました。
それに対して新井氏も、「人は恐れがなくなるまで貯め続ける。恐れの分だけ貯蓄をするので決してバランスは取れません。お金は人間が作ったのに人間より偉くなってしまい、いろいろなものを奪われていました。そこから解放されるためには、人の愛で満たされていないといけないのです」と共感を示します。
マネーから自分のライフを取り戻すために、どのような行動をすればいいのか。
人と人の間に愛を循環させ、持続可能な社会を作るためにはどうしたらいいのかを考えるために、色々な切り口から白熱したトークが繰り広げられました。
多くの参加者にとって、対話を通して学びを深め、自分の人生を見つめ直すきっかけになったようです。