介護休業制度➀・・概観
日本国内では、ご承知の通り急速に少子高齢化が進んでいます。それに伴い、国も法的施策として、育児・介護について育児介護休業法を中心として、様々な制度を制定しており、また、育児・介護の両立支援制度のモデルを続々と発表しています。
ただ、これまでは、どちらかというと育児に重点が置かれ、またその世間の認知度も同様でした。実際、直近の改正では、会社は育児休業制度について、そこで働く社員に対して、その内容を周知すること及び対象の社員に対して、個別に育児休業取得の意向の確認をしなければならないと法律に定められました。
さらに、例えば産後パパ育休など、育児をしながら働く社員へさらなる柔軟的な支援行うことを法制化し、男性の育児参加も積極的に推進するよう、会社へ求めています。
一方で介護休業については、団塊世代と呼ばれる人々が本格的に介護を必要とする年齢を迎える、日本の人口構造を鑑みると(以下図表)、介護を必要とする高齢者が今後、急速に増えていくことが予想されます。
それに伴い、親の介護など私生活上の負担を抱えながら、職業生活を送る40代~50代を中心とする中堅社員が顕著に増えていくでしょう。
会社としても、長く働き続け、事業の発展に貢献してくれた社員、特に自社の中核を担う社員を「介護のため」という理由のみをもって手放すことは避けたいはずです。
しかし、2024年1月現在、育児休業と比較して介護休業の改正のスピードは遅く、法制化が遅れていると言わざる負えない状況です。
筆者としては、主に中堅社員の離職防止の対策として、直近改正の育児休業制度と同じような仕組みで、社員に対する介護制度の周知や会社の方針の策定、また管理職研修や相談窓口の設置等を通して、介護が必要な社員を私生活上も支える仕組み作りが必要であると考えます。
さらに、会社として介護支援の仕組みを構築していくことは、現社員のモチベーション向上や安心感を醸成し、採用の場面においても、優秀な社員の獲得へのアドバンテージが期待できると思っています。
なお、日本でも、ようやくですが、家族の介護をしながら働く人の介護離職を防ごうと厚生労働省はすべての企業に対し、介護休業などの支援制度を40歳となった従業員全員に周知することを義務づける方針とする動きが出てきました。
さて、冒頭の人口推移からも分かる通り、今後は、自社の持続的な運営をする上で、社員の介護の可能性を無視したマネジメントは思わぬ事態を引き起こす可能性が高まっていくことが予想されます。
すなわち、介護が必要な管理職、優秀な社員の離職防止のためにも介護に直面した社員に対して、休業を取りやすい環境を整えていくことは、会社が持続的な運営を行う上で、福利厚生的な意味合いではなく、絶対条件になっていくでしょう。
そして、会社のメリットだけでなく、社員にとっても、介護離職により収入の道が途絶えてしまうことを防止することができる、win-winの仕組みづくりを会社が構築していくことが、本当の意味で日本の少子高齢化対策に貢献することになると思います。