非正規社員戦力化のための処遇制度のポイント


処遇の問題について。これが一番頭が痛いところだと私は思います。

「処遇制度をどのように作るのか」というところですけども、例えば「業務の内容とか業務のレベルはどうなんですか?」このあたりを見て同じような業務で同じような内容であれば同じ評価を使いましょう。もしそこに差があるんだったらそれは別にしましょう。

基本的には人材の活用法が同じ場合は同じ賃金を払わなければいけない、同一賃金払わなければいけない、となっています。

短時間正社員なんかの場合、短時間正社員ですから労働時間が短いので、同じ人事考課制度を使っていたり同じ評価をしていたら、これは同一労働同一賃金の問題になります。

でも、業務内容も業務レベルも責任範囲も違うので、だから別の評価基準を使っているということであれば、会社がもし同一労働同一賃金で労働者側から訴えられても、これは「別の制度なんだからこうなんですよ」という説明がつきます。

このあたりをどのようにするのか、注意をしていただきたいと思います。

知り合いの会社でこんな事例がありました。

今までアパレルの会社にいたAさんに対して「異動してよ」と言いましたが、「いや私は異動したくないです」と。すると、「ちょっと待ってよ、あなた総合職じゃないの?」という話になりました。そこで社長さんからカンカンに怒って電話がかかってきて「いやー、総合職なのに異動してくれないんだよ。転勤もしてくれないし、これね限定正社員なんだよ、矢萩先生、この人限定正社員にしたいんだけど、なんとかなりませんか?」「社長、ちょっと待ってください、社長の言っていることはわかるんですが、確かに法律上は出来ます。法律は出来るのですが、この人きっとモチベーションが下がってやめちゃうかもしれませんよ、それでもいいですか?」「いやそれは困るよ」「社長の会社は、正社員と比べると賃金の水準が一般職の場合75%でしょ、これは『移りたくない』ってなりますよ、どうします?25%の格差がありますよ、どうしますか?」こんな話になりました。社長も「うーんどうしようかな、これどうしようもないな」と。しかも、「ほとんどウチのアパレル会社の中で総合職の人が転勤するようなことが無かった」と。「社長、悪いのですが、恐らく75%というのがちょっと下げすぎだから難しいのだと思いますよ」とお話をして「そうか、じゃあ制度を変えていかなきゃいけないね」なんて話になりました。

要するに、どのぐらいの格差を設けていくのかというところは一つポイントになるのではないかと。基本的な考え方は、基本給はあまり変えない方が良いかなと思っています。

今から新しく導入する会社は「正社員はこう、また限定正社員はガクッと落とします」という、「いやそんな限定正社員なんていくわけないじゃないですか」って話になります。

だから、基本給の賃金水準はあまり落とさない方法を取っていくというのが一つの方法であるのではないかと思うのです。例えば、基本的には、ここにありますように一つはテーブルの中の上限を決めてしまう。

「無限定正社員の場合は7等級まで昇格可能、限定正社員の場合は5等級までしかしませんよ」こんな方法で賃金テーブルを考えてみる。上限設定をするという方法です。

次は、昇給による格差を設けましょう。

無限定正社員、いわゆる正社員は、B評価の場合は上がって6千円くらいがよくみられます。でも、限定正社員の場合は、「B評価の場合は8割にして4800円にしましょう」こういった形で賃金テーブルを変えていく方法。「テーブルは全然変えない、一切変えない、賞与の支給のみ格差を設定しましょう」という方法です。

いわゆる正社員と、無限定正社員ですね、「いわゆる正社員と職務の内容が変わらずいわゆる正社員の中に昇級しない者がいる場合には、いわゆる正社員と多様な正社員間の賃金水準の差は小さくすると、こんなところが出ていますので、ここもポイントになります。

だいたいどのぐらいの賃金格差にするべきなのかというところですけども、10:8が現実的なところなのかなと思います。

では、格差を設ける場合には合理的な格差にしましょうということで、「勤務地限定正社員や勤務時間限定正社員(特定外労働の免除)については、いわゆる正社員と賃金テーブルは同一とし、いわゆる正社員には転勤や残業の負担の可能性にプレミアムを支給する」と。それは転勤や残業の可能性があるからだよ、というところで手当を支給していきましょうね、加算手当なんてのを出していきましょうね、ということです。

 

だいたい今どういう風に現状やっているかというと、100%という会社が多いです。90~100%、だいたい80~90%ぐらいのところがだいたい賃金水準の格差を設定していないところが多いですね。ここを一つ押さえておいてほしいと思います。基本給の場合、ほぼ100%というところが34.6%あります。