給与のデジタル払いとは
こんにちは。 有限会社人事・労務の髙橋です。
いま、給与のデジタル払いが話題になっています。
経産省の調査によると、2023年時点でキャッシュレス決済比率は全体の4割近くまで増えているようです。
確かに、私自身も日常的にはアプリを利用したキャッシュレス決済でほとんど買い物をしているように思います。スマホ1つで完結しますし、利用するアプリや運営会社によっては、利用した分をポイントで還元してもらえます。
私は趣味でランニングをしていますが、途中で飲み物が欲しくなってもスマホさえあれば、すぐに飲み物を買えるので助かっています。(小銭を持たなくても良い)
この給与のデジタル払いは実は昨年2023年4月からできるにするための法改正はされていたのですが、実際に給与のデジタル払いを行うためには【厚生労働省の指定を受けた資金移動業者】を利用する必要があり、実際には指定業者が出てくるまでは利用できない状況にありました。
ですが、今年2024年8月にPayPay株式会社が、給与のデジタル払いができる資金移動業者として指定を受けたとのことで、いよいよ給与のデジタル払いが現実に行えるものとなりました。(令和6年8月9日時点であと3つの事業者が審査中であり、今後指定事業者はますます増えていくことが予想されます)
ここで少し、デジタル払いについて確認しておきましょう。
◆給与のデジタル払いとは
給与のデジタル払いとは、従来の現金での支給や銀行口座への振込等の方法で賃金を支払うのではなく、会社が資金移動業者と呼ばれる業者の口座へ賃金を振込み、当該業者から労働者が保有する決済アプリのアカウント等に送金されるといった仕組みのことです。
例えば、日常生活の買い物等はアプリを利用してキャッシュレスで行っているという方は、銀行口座⇒決済アプリへのチャージ(送金行為)等なしに利用できることになります。
他にも、給与は銀行口座への振込という企業が多数かと思いますが、短期間の外国人労働者など銀行口座を新たに作るのはハードルが高いという労働者に対しても、デジタル払いの対応を取ることで賃金の支払いが可能になる(結果そういった人材を確保しやすくなる)などのメリットが考えられます。
(※ただし、デジタル払い用の口座は100万円が上限であること、またそもそも口座登録がないとアプリ自体が利用できないなどのケースも考えられるため、それらの点は注意が必要です。)
一方で、振込業務を行う事務方の業務量が増える可能性が高いというデメリットがあります。
給与のデジタル払いは従業員に強制できません。あくまで、本人がデジタル払いを希望する場合に限り、利用できるものです。また、本人の希望次第では給与の一部のみをデジタル払いにすることも可能です。従いまして、1人に対して複数回分の振込作業が発生し、業務量が増えることになります。
◆デジタル払いの活用方法
デジタル払いを導入するためには、
①労使協定の締結
②希望者から同意書をもらうこと
③希望者へのデジタル払いについての説明
④社内規程の見直し
が必要となります。
また、デジタル払いに使用したいツール・事業者がちゃんと厚労省の指定を受けている事業者である必要がありますので、ツールも何でも良いというわけではありませんのでご注意ください。
詳しくは厚生労働省のページをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html
実際に導入するには少し手間がかかりますが、デジタル払いをうまく活用することで様々な試みができそうな気もします。
普段、決済アプリを利用している人を見ていると、チャージされている残高を知人間でやり取りをして、食事代などの精算を行っている人が多いなと思います。決済アプリの利点はまさにそのようなスピード感あるやり取りができるところだと思います。
銀行口座に振り込む場合、振込先口座を人に伝えないといけないため、どうしてもセキュリティが気になりますし、振り込む手間が発生します。しかし、アプリであれば、その場でアプリの操作1つでやり取りができます。(銀行口座を他人に教えるのは躊躇するけど、アプリの番号なら…という方は結構いらっしゃるのではないでしょうか)
他にも、会社やグループ用のアカウントを作成し、みんなでそこに資金をプールして、何かの際に利用するといった使い方もできそうです。
現金やクレジットカード、財布自体を持たずに、買い物や旅行に行ったりということが当たり前の時代に近い将来なるのかなとなんとなく感じるニュースでした。