アフターコロナの人事制度② 新しい会社の人事体系は「コミュニティ」型社員を軸に考える


(有)人事・労務 社会保険労務士の畑中です。
前回に引き続いて、アフターコロナの会社の人事制度について考えてみたいと思います。
 前回、これからの雇用はコアな「コミュニティ型社員」が組織の軸になっていくのではないかという話をしました。
 「コミュニティ社員」は、その会社の新たな価値をともに生み出していくメンバーです。このメンバーは、単に労働の対価としての報酬でつながっているのではありません。「自分たちは何をすべきか」「自分たちは何ができるか」「自分たちは何をしたいか」という点で、共通の価値観、課題意識を持っており、一人一人が自律した考えと能力を備えている必要があります。そして、経営陣やコミュニティ社員たちの共通の課題意識の中から新たな事業が生まれ、やがてそれは時間をかけて会社の利益を生み出していくようになるでしょう。このような社員が軸となり、一人一人の社員が自律しつつも自由にいきいきと活躍できる場があり、つねに新たな価値が生まれる組織を「自律分散型組織」と言います。

コミュニティ型社員を軸とした、自律分散型組織の人事体系図は以下の図のようになります。

【自律分散型組織 人事体系図】

社員は大きくコミュニティ型とジョブ型に明確に分けます。ただし、エントリーメンバー(これは例えば30歳までといった一定の年齢の区切りがあったほうが現実的だと思われます)はどちらに進むべきか、働きながら考える期間とします。
 どの社員にも年齢に応じた基本給と家族構成に応じた家族手当は支給されます。これは今後国が行うようになれば必要ありませんが、最低限の生活を維持するためのベーシックインカムのようなイメージです。そのうえで、以下のような仕事の役割と報酬体系とします。

 コミュニティ型社員
 会社の意思決定をするメンバー。会社の共有資本を自由に活用できる。長期的雇用を前提として、共通の価値観、課題意識で仕事にとりくみ、組織のあり方を常に考える。時間的労働という概念はなく、自分の人生の一部に組織への活動、貢献が組み込まれている(仕事と遊び、プライベートの融合が自己の中で問題なくできている状態)。報酬は一定の経験と周囲からの信頼感、組織全体への貢献・影響力の大きさいで固定部分が決まり、変動部分は会社全体の利益に応じて都度決定する(業績分配賞与的)。

ジョブ型社員
 会社が求める業務に「成果」で応える。基本的には時間的労働という概念はなく、いわいるアウトプット型の成果をだすことを役割とする。ただし、あまりレベルの高くない1や2に関しては、実態に応じて労働時間を管理する。報酬は基本的には職務給。担当する仕事の市場価値に見合った固定給与+アルファ(歩合や周辺業務に応じて設定)とする。1年~3年程度の契約期間で更新する。あるいは、長期雇用を前提とする場合も、担当する役割に応じて、職務給部分は年度単位で変動する。

 エントリーメンバー
 若手社員で、仕事を覚える段階。固定給与+業績に応じた賞与とし、時間管理を行う。

上記を3つの区分、とくに「コミュニティ型社員」を軸に組織は考えていくことになります。将来的には社長や役員が会社のすべてを決めるのではなく、コミュニティ型社員も参加した全体会議のような話し合いの場が組織の最高決定機関となっていくかもしれません。コミュニティ型社員は、その最高決定機関で承認を得られればどのような事業にも取り組むことができます。ただし、常に「タイムリーな情報共有」と必要と思われる関係者への「報告と相談」は随時実施する義務が生じます。

それぞれの区分に「短時間勤務」や「在宅勤務」は存在します。(ただしコミュニティ型社員に関しては労働時間の概念がない)。このような組織が増えてくると、自社のジョブ型社員やフリーランサーが、他者のコミュニティ社員ということもでてくるでしょう。また、前回も述べましたが、ジョブ型社員とフリーランサーとの区分が徐々にわからなくなり、そのうち一体化する可能性もあります。

 今後は間違いなく多様な働き方が可能となってきます。自分の趣向や考え、ライフスタイルに合わせて仕事を選ぶことができるようになってきます。しかし、それは逆にいえば自分がしっかりとした職業意識とスキルを持っていることが前提となります。社会全体として働くことに対する意識改革が必要となってきているように思います。