性善説の国から。 ~世界幸福度1位のデンマークからソーシャルデザインを考える~
北欧、デンマーク。
国連が毎年、発表している幸福度ランキング(2016年)で、1位に輝く最も“幸せな”国。
この国連のランキングでは、調査対象国の国民の自由度や、1人あたりの実質GDP、政治的自由度、健康寿命、人生選択の自由度、社会福祉の制度などを計り、「幸福度」を数値化してランク付けしている。
デンマークは、2016年に限って1位というわけではなく、2015年は3位、2014年、2013年においては1位になっており、常にランキング上位の“幸せ常連国”なのです。
その高い幸福度の理由はどこにあるのか?
教育費や医療費が無料だったり、充実した社会福祉制度が有名ですが、実際のところ、どんな国なのか、デンマークに旅してきた。
【風が吹き抜ける国デンマーク】
デンマーク到着間近に飛行機の窓から彼の国を眺めると驚くことがある。それは、日本と比べると恐ろしく地形がフラットなのである。まるで海と陸とが一つにつながっているかのように地形的起伏がないのだ。
調べてみるとデンマークはヨーロッパで一番低い国。山と言える山はなく、この国の最高地点は なんと170メートル。東京タワーのおよそ半分の高さ…!
山好きの僕としては、登る山がなくて残念ではあるのですが、地形的に何も遮るものがない起伏の少ない土地だからこそ、風が吹き抜け、風力発電に適した環境となるわけです。日本で自然エネルギーというと太陽光発電のイメージが強いですが、デンマークでは太陽光発電よりも風力発電の方が多く、たくさんのエネルギーを発電しています。
他国で〇〇が流行っているからと安直にマネをするのではなく、自国の強みをよく分析して捉え、それに相応しい選択をする。そういうスタンスももっと取り入れて行きたいところですね。
【特別ではなく当たり前】
空港に着いてから電車に乗ってコペンハーゲンへと向かう。乗り込んだ電車の中で見つけた自販機には「FAIR TRADE」のマークがあった。
何気ない自販機で売られているコーヒーもフェアトレード製品である。中央駅に並ぶお店にもオーガニックフードが並び、オーガニックが“特別”なのではなく“当たり前”に近い印象を受けた。
デンマークでは、オーガニックやフェアトレードについての意識が社会全体で高く、社会的公正や環境的持続可能性について考える機会が学校教育や家庭でも多いとのこと。
【性善説に根ざした仕組み】
デンマークは古い町並みを大切にしている。過度に現代的な建物を追いかけることなく、古きものをうまく現代に活かそうと工夫する。
中央駅も写真の通り、昔ながらの煉瓦造りの建物を残しながら今に至る。東京の人でごった返す駅とは違い、落ち着いていて、吹き抜けで天井が高い建物は趣があって、心地よい。
駅を利用すると、ふと気づくのがデンマークの駅には改札がないということ。チケットを買う機械は当然あるのだが、買ったチケットをかざす改札がないのだ。 日本みたいに改札を通って電車に乗るという仕組みになっていないので、チケットを買わなくても電車に乗れてしまう。しかし、デンマークでは「無賃乗車をするような人はいない、みんなちゃんと乗車券を買って乗る(はず)」という性善説に則ったシステムデザインをしている。 会社でも国でも不信からの仕組み作りは無駄なコストと相互不信につながるという考え方があるが、デンマークは性善説を信じ、社会運営をしているということだろう。
【国民の意識レベルがソーシャルデザインに現れる】
自販機のフェアトレード商品、お店に並ぶオーガニック商品、改札のない駅、古き建物を活かした街づくり。こうした一つ一つの根底には、デンマークで暮らす人たちの生き方に対する美意識、望ましい社会の形への想いがあるように感じる。
自分の家のインテリアや雰囲気に自分の価値観、ライフスタイルが反映されているように、その国の形には、その国で暮らす人たちの意識が色濃く反映されていると思う。そういう意味でソーシャルデザイン、自国のあり方は自分たちに無関係のものではなく、自分たち一人一人の意志、意識レベルの現れでもあると今回デンマークに行って再認識した。
世界有数の幸福な国デンマークでは、どのように“幸福”につながるソーシャルデザインを行なってきているのか? その根底にある意識と共に探っていきたい。
コペンハーゲンからロラン島へ場所を移し、出会った森のようちえんや公教育現場、エネルギー政策を進めてきたMr.Energyことレオさんなどの話を中心に次回以降、深くお届していきます。
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引用元:性善説の国から。~世界幸福度1位のデンマークからソーシャルデザインを考える~
本記事は、「HAGUKUMU COLUMN 人生を大切にする経営、働き方について考える」(株式会社はぐくむ)より転載しております。