対話から発信へ、そして共感へ「人的資本経営が拓く中小企業の新たな未来 」
この内容は、5月28日に『大ちゃん金ちゃんの ここ掘れワンワンスタジオ!』で放送されたコンテンツ内のまとめ記事です。本編はこちらからご覧になれます。
人的資本経営とは、従業員を「資源」と捉えるのではなく、「資本」と位置付け、育成に投資をすることで付加価値を高めていく経営手法のことです。
清水秀樹さんは、人的資本経営コーディネーターとして、中小企業にこの考え方の普及啓発をしています。
清水さんが企業と接する中で感じたのは、多くの中小企業の経営者からの「うちはまだまだです」という反応です。従来から人材育成やワークライフバランスなどの施策を採用している会社であっても、それを「人的資本経営」と明確に意識したり、自社の強みとしてアピールしたりすることはあまりできていないようでした。
清水さんはそういう会社に対して「一番大事なことは現状と、ありたい姿のギャップを社内で共有すること」と話します。例えばサーベイの数字を利用して「営業の数字が低い理由は何だろう?」と社内で検討するなど、定量的な指標も比較の材料にすることが有効だと話します。
自社の強みや特徴的な取り組みを積極的に外部に発信することで、共感を得て優秀な人材の採用につながります。具体的な発信の方法としては、社員ブログでの日常の姿の公開、動画の作成とSNSへの投稿、地域イベントへの参加などがあげられます。
例えば、50 名規模の製造業では「絆プロジェクト」と称する若手社員による採用活動を実施しています。彼らの日常の食事風景などをインスタや Twitter で発信しており、動画やイラストでもアピールしていました。
発信する際のポイントは、社員それぞれの得意分野を活かすことです。絵が得意な人にイラストを描いてもらったり、ITスキルの高い人に動画編集やSNS発信を任せたりと、社員同士が役割分担を決めていくと、「自分たちが会社の資本を育てている」という愛着が湧いてきます。社内で新しいコミュニティが生まれ、仕事への主体性も高まることでしょう。
清水さんは企業支援をしている中で、なかなか情報開示できない企業をたくさん見ているそうです。
「今の時代は物があふれていますから、モノではなく心に共感することが大事になってきます。共感するポイントが言語化できる会社は安心感が得られ、人が成長していくのでやりがいが感じられます」と清水さん。
日々の業務が何につながっているのか見えないと、やりがいが感じられないので離職に繋がる恐れもあります。
情報発信することで、お客様から「そういうものを作っているんだね」と認知されたり、共感されたりすると社員のやりがいにも繋がります。単なる数字ではなく、その裏にあるストーリーを語ることで初めて共感が生まれやすくなります。
「お客様にはよく人的資本の話の時には情報開示が大事ですよと伝えています。数字だけ上がっても誰も見てくれません。こういう結果が出ましたではなくて、『今頑張っています』というing(進行形)でもいいと思います。ストーリー化することがすごく大事です」
自社の存在意義を外部に発信することは、優秀な人材の採用と定着にも繋がります。実際にある企業では「社員のブログを読んで共感した」という人からの応募があったそうです。
人の資本経営を進めるには、経営者の覚悟と社員の主体性が必要不可欠です。対話を通じて社員の想いをくみ取り、それを外部にしっかりと発信することで、中小企業は社会から共感を受け取ることができます。共感によって優秀な人材が集まり、企業の将来が拓かれていきます。