コミュニティ経営とは?地域とのつながりとティール組織について考える


2023年12月12日、有限会社人事・労務の書籍『コミュニティ経営のすすめ』の出版と、動画コンテンツ「自律分散的組織」の出演を記念したオンラインセミナーが開催されました。

『実務でつかむ! ティール組織 “成果も人も大切にする”次世代型組織へのアプローチ』著者の吉原史郎さんをゲストに迎え、コミュニティ経営をティール組織の文脈も踏まえて紐解いていくという内容です。

働き方や仕事の価値観も多様化し、組織に属する考え方も大きく変遷する中、企業組織に対するあるべき姿の考え方も、従来とは異なったものが生まれ、普及してきました。『ティール組織』の書籍が注目を集めるなど、多様な働き方や組織のあり方が広がる中で、どのようにすれば、一人ひとりが活かされて、それぞれが幸せに働けるようになるのかを探りました。

コミュニティ経営とは?

セミナーでは、矢萩がどんなおもいで本を書いたのかという背景の説明から始まり、内容の解説に至りました。

人的資源管理という言葉に代表されるように、組織を機械論的にとらえ、管理・統制をはかりながら価値を生み出していくこれまでの組織運営から、時代の要請は、生命倫理的な捉え方による組織運営へと変化しています。

矢萩の考える「コミュニティ経営」とは、

身体性を感じるつながりの場及び地域の持続的な健全性を探求していく営み

と定義しています。

例えば、自分がある町に住んで生活していても、行政の町の単位そのものはコミュニティとは言わない。また自分が働いている会社も、〇〇会社というような表記された会社名で表現され、コミュニティとは言わない。
人と人の交流、人と自然との交流といった”動的・身体的なつながり”無くしてコミュニティとは言わない、と矢萩はいいます。

そこには、”自分まるごと”というホールネスな生活そのもの、人生そのものから、会社組織や仕事をとらえるという「暮らしごと」の感覚が大切になります。

組織の構造を捉え直す

お金軸・会社文脈で経営をとらえてしまうと、お金にならない仕事や能力はおざなりになるか、無駄になってしまいます。

コミュニティ経営では、多様なつながりを大切にし、お金につながろうがつながらなかろうが、会社や仕事を創造する場活動ととらえていく考え方を示しています。生活・暮らしという文脈から「暮らしごと」として、地域社会の課題解決や新たな価値創出に取り組む持続的な経営の在り方を大切にする考えです。

会社組織をコミュニティとしてとらえ、個人と社会、個人と市場経済といった関係性の中に「間」の存在をもうけ、集団としての組織を置く。
そのようなコミュニティ経営を推進する組織体を「コミュニティ型組織」と呼んでいます。

コミュニティ経営を推進するためには、組織が上下関係や競争を煽りたててしまうような組織構造による運営ではなく、自律分散な状態で運営されていることが重要です。

『コミュニティ経営のすすめ』では、そのための生活・暮らしごと文脈からとらえた組織開発および人事の視点を紹介しています。

「間(あいだ・よはく)」を活かす人事制度の構築

矢萩は人事制度について、こう語りました。

「人事制度は余白のある『器」のようなものです。ひとり一人のパーソンにあわせ寄り添い、経済中心の分断的個人主義社会から関係性中心のコミュニティを間(あいだ・よはく)に置いたしなやかな個人へのパラダイムを促す必要があります。

弊社は顧客から『規定や人事制度を作ってほしい』というご相談をいただいたときに、『職場の中でのわくわくやドキドキというものに、それが貢献できるのか』という視点で、これは必要な制度やルールか、それともすでに必要なくなった制度やルールか、というように、コミュニティとして会社をとらえて方向性を決めています。」

そして、人事制度をきっちりと作りこまず、あえて「余白」を作るにはどうしたらいいのか、矢萩は健康経営や人的資本主義の考え方を交えながら説明しました。

「会社と地域、社会との間に『余白』を作っていくときに、いきなり社員を外に出すことは難しいです。お金を稼ぐという経済合理性を軸にした会社の視点にゆらぎをおこす。健康経営といった国の方針をチャンスととらえ、お金やモノ視点の経営から、身体性や人間性そのものと結びついた取り組みへと『余白』をつくっていくのです。

健康は主観の問題であり、他人から『健康ですね』と言われても、健康かそうじゃないかを決めるのは自分です。自己を深く掘り下げていきながら、身近な人や地域への貢献というふうに、会社を少しずつ外に開いていくというような流れを作っています。」

矢萩は、対話の習慣やクレド作り、吉原さんの提唱しているマネーワークを通して、「一人ひとりがどんなものにエネルギーを投影しているのか」を知ることができると話します。

また、物事の見方を変えることにより、新しい変化を生み出すことについて示唆しました。

「健康経営というものは、単に行政対策としてやるのはもったいないと思うんです。単にコンプライアンスとして健康経営を終わらせるのでなく、例えば、メンタル不全や長時間労働などの労務問題が生じることが多い会社であったとします。問題が起きるということは、社員さんの組織に対する強い投影があるということですよね。ここでリクレイミングワークを取り入れていきます。

『ここは、日本一問題が起こる職場なんだ。それが私はワクワクするし、大好きなんだ』とリクレイミングしていくことで、問題を単にネガティブにとらえるのではなく、自分の固定された見え方を手放していく。仕事に取り組む姿勢を変化させる。

そんなふうにポジティブな面とネガティブな面を両方あわせもったときに、そこから何が生まれてくるのか、その場にいる全員が『職場にいようが生活の場にいようが、人生は最高だ』と思えるようになる。そういうところから『健康経営』というものを取り戻していく。このような、『旧くて新しい出島づくり』に取り組んでいます。」

生命の輝きと組織の活力:ソースプリンシプルの視点から

ゲストの吉原史郎さんはソースプリンシプルという視点から、独自の見解を述べました。

 「矢萩さんの話には、『まずは自分を見つめ直し、生命(いのち)として自分の活動をとらえてみよう』という考えがありました。それはティール組織にとって一番大事な視点です。
資本主義が行き過ぎた現代だからこそ、生命が輝くための余白がいるのではないかと思います。

会社を運営していると、画一化や全体化されてしまうことで、誰のどんなエネルギーから仕事が生まれているのかが、見えにくくなることがあります。
最初のエネルギーに立ち戻り、そこに視点を向けるというのがソースプリンシプルの考え方です。」

一人ひとりの社員が幸せに働けることを目指すES(人間性尊重)に基づくコミュニティ経営と、ソースプリンシプルの考え方に触れながら、地域とのつながりとティール組織について思考をめぐらせるセミナーとなりました。

◎動画コンテンツ「自律分散的組織」

◎書籍『コミュニティ経営のすすめ』