「貢献感」で会社と社員をつなぐ <自然経営シリーズ 第3回>


<有限会社人事・労務 設立20周年記念セミナー基調講演より>

働きやすい職場はどのように作られるのか?
イノベーティブで協働的な組織のあり方とその実践について研究を行っている埼玉大学大学院の宇田川元一先生の講話をもとに、コントロールを排除した、より自然体な経営スタイル「自然経営」のあり方について考えてみた。

第1回:人がつながるプラットホーム、コラボレーティブコミュニティとは?
第2回:”勇気を持たなくても言い出せる”組織の作り方
第3回:「貢献感」で会社と社員をつなぐ
第4回:”弱さ”とはつまり、”関わることのできる余地”のことである
第5回:弱さが強さに変わる組織

 

<「貢献感」で会社と社員をつなぐ(第3回)>


●定期的フィードバックではなくリアルタイムフィードバック

今後、兼業が一般的になり一企業への依存度が下がった先、それでも企業がスタッフの求心力を保つためには何が必要だろうか?
会社とスタッフの両者を考えた場合、それは「高いパフォーマンスを出せること」にフォーカスすることではないかと宇田川先生は語る。
これはつまり、スタッフの「貢献感」にアプローチすることだと言える。

では、そのために組織には何が必要だろうか?
宇田川先生は、リルタイムフィードバックの重要性を指摘する。そして、上司や仲間の役割も、「成長へのサポート」にシフトしていくことが大切だと語る。
半年に一回のフィードバックや、1ケ月に一回の定期の面談でもなく、何かあったとき、必要なときに、その場で(リアルタイムに)フィードバックが行われることが大切なのだ。(そしてこれは、定着・成長のサポートへとつながる!)

一方で、いま多くの企業で行われているフィードバックは半年や1年に一回の”定期的な”フィードバックである。それは、スタッフのためというよりも会社の都合で行われている。
成果評価における目標の達成度の確認、また、給与を決定するための人事評価制度の一環として行われるものなのだ。
あまり大きな声では言えないが、人事成果の中で最も従業員満足度が低いのは人事評価制度に対してである。
理由は様々であるが、半年前に立てた目標に対して(半年間寝かせられた後に)フィードバックされても響かないというのが正直なところだろう。

 

●企業組織のあり方も競争から協力の時代へ
あまり知られていないが、欧米企業を中心に人事評価制度を廃止する企業が増えている。組織のパフォーマンスを上げることを、人事評価制度が阻害しているとの考えが広がっているのだ。
メンバーを競争させパフォーマンスを発揮させるのではなく、今求められているのは、互いに協力し足りないところは支えあいながら組織としてのパフォーマンスを発揮させることなのだ。
その点、今の多くの人事評価制度はスタッフ同士、部署同士を競わせることが前提となっており、その中で協力を促すというのはかなり矛盾しているといえる。

では、今の人事評価に代わる競争から協力へと促す制度とはどのようなものだろうか?
人事評価制度を廃止した企業の多くが、代わりに実施しているのがタレントレビューだ。
タレントレビューとは、スタッフそれぞれの強みやキャリアの希望、組織の目標等を考えたうえで人事担当や上司が議論を行うことだ。
つまり、組織の中で、それぞれに高いパフォーマンスを出してもらうための議論の場を設けるのだ。
半年や1年といった短いスパンではなく中長期的に組織のビジョンに照らし合わせたうえで個人個人を見ていくのだ。
高いパフォーマンスを継続的に出すことができれば自ずとスタッフの満足度は上がる。(貢献感が幸福度を上げる)上司の役割も制度のあり方も、コントロールや競争ではなく、成長のサポートや安心といったキーワードが重要になってきている。

そして、忘れてはいけないのは、今の多くの会社の上司の役割や制度は、そのようなカタチをとっていないということだ。

 

著者:原田真吾 WorldShihtコミュニケーター/社会保険労務士有資格者/