体感!ES組織開発実践講座 オープンセミナー「生成AIを活用した未来の組織づくり ~革新的な職場デザインへのアプローチ」レポート【前編】生成AIが組織づくりにもたらす可能性
近年生成AIの発展により、組織のあり方や学習方法に大きな変革が起きつつあります。
「AIに仕事を奪われるのではないか」と不安に感じている人も多いようです。
そこで、2024年6月29日に行われたES組織開発コンサルティング実践講座の合宿では、田原真人氏を講師に迎え、生成AIが組織づくりや職場デザインに与える影響についてセミナーを行いました。
田原氏は生成AIの登場により多くの人が「チャットGPTが来て自分たちの仕事が奪われるんじゃないか」と不安を感じていることを指摘しつつ、AIとどのように向き合うべきかについて語ります。
冒頭では人間のコミュニケーションの基本的な仕組みについて説明がありました。田原氏は、「人間の源(ソース)から生命エネルギーが外部に対して湧き上がり、何かしらの欲求を満たすために働きかける」というプロセスを図で示しながら解説。
湧き上がってきた衝動が満たされたら「快」感情が起こり、満たされなければ「不快」感情が起こるのが生物の自然な反応です。不快感情が生じた際の反応として「戦う」「逃げる」「死んだふりをする(自分を麻痺させる)」というパターンがあることを指摘し、これらの反応は、社会構造の中の支配構造にはまってしまう危険性を述べました。
一方で、より建設的なアプローチとして、不快な反応の背後にある感情を理解し、自分のニーズを掴むことの重要性を強調。暴力的なコミュニケーションではなく、お互いのニーズを満たし合う「非暴力的コミュニケーション」の重要性を説きました。
次に、田原氏は植民地支配を例に挙げ、暴力的なコミュニケーションの構造について解説。恐れの源を作り出し、正解の型にはまることで社会から肯定されるという仕組みが人々を分断し、学習無力感を生み出すことを指摘しました。これにより人は自分の「源」から切り離されて、周りの娯楽で自分自身を慰める仕組みができているのです。
この文脈で、田原氏は現代の教育システムについても言及。暗記教育を「フォアグラ型教育」と呼び、次のように批判しています。
「現代の教育は、批判的に考えるより正解をいかに飲みこんでいくのかが重要視されています。僕はこれをフォアグラ型教育と呼んでいます。フォアグラというのは、ガチョウの肝臓が脂肪肝になるまで、ガチョウの口に餌を詰め込むという残酷な形で育てています。生産者がガチョウに『我慢してずっと餌を食べ続けるガチョウが偉いんだぞ』と言うわけです。本来は生産者にとってメリットがあるだけなんだけど、ガチョウとしては餌を詰め込まないことに罪悪感を覚えたり、『私は一番我慢強くて、他のガチョウより価値のある肝臓なんだ』と優越感を覚えたりするなど、倒錯した感情に陥ってしまいます」
田原氏はこのような教育システムが、自己否定感を強め、本来の自分らしさを抑圧してしまう危険性を指摘。ではどのようにwell-beingを高めていけばいいのか疑問を投げかけます。
ここで、生成AIの登場が従来の学習方法や組織のあり方に大きな変革をもたらす可能性が示唆されました。
田原氏は、AIを活用することで、これまで時間がかかっていた学習プロセスを大幅に効率化できることを強調。
例えば、難解な本を理解するのに10年かかっていたものが、AIの助けを借りることで1週間程度で理解できるようになる可能性があるとしています。また、言語の壁を超えて、世界中の知識にアクセスできるようになることで、学習の幅が大きく広がることも示唆しています。
「学習ということを考えた時に、日本語って今ローカルランゲージなので、外国語が翻訳されて日本語で伝わってることってものすごく制限されています。さまざまな言語で流通して当たり前になっているのに、日本語として翻訳されていないことは大量にあります。ですから日本語だけで考えていると、その考えの外側にいけないわけです。それは『文化的ヘゲモニー』と言われています。植民地や敗戦国は情報があまり広がらないように制限されてきたという歴史的背景があります。
これまでは自分自身の源や好奇心に従って爆発していくことが、言語の壁でなかなかできませんでした。
ところがAIを使うと何語であっても読んでいくことができます。本当に世界は変わるなという風に考えています」
実践セッションでは、参加者はChatGPT-4を使用して、フランス語で書かれたステファン・メルケルバッハ氏の文献を読み解きました。
参加者は、AIを使って著者の経歴や思想的背景を調べ、文献の内容を日本語に翻訳し、さらに疑問点をAIに質問するという一連のプロセスを体験。実践的なAIの活用方法を学びました。
生成AIの登場は、私たちの働き方や学び方に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。AIを活用して個々のメンバーが自由に学び、その知識を組織全体で共有することで、より創造的で柔軟な組織づくりが可能になるかもしれません。
後半のレポートでは、この変革がどのように組織の価値創造につながるのか、「自己生成価値」「他者触発価値」「機能価値」という概念を通じて探っていきます。