高年齢者雇用安定法 法改正情報①


今年の法改正・施行で大企業・中小企業に影響を及ぼすと予測されている法改正が 4月1日から施行された高年齢雇用安定法ではないでしょうか?

2021年の法改正部分を説明する前に、60歳代前半の制度を確認したいと思います。60歳代前半というのは60歳から65歳まで高年齢者の雇用確保措置になります。

高年齢雇用安定法【法8条】では、定年に関しては60歳以上という基準を定めています。こちらは、ご存じかと思います。高年齢雇用安定法【法9条1項】には高年齢雇用確保措置として65歳までの安定した雇用を確保するためにいずれかの下記①から③の措置を講じなければならないと定めています。こちらは義務化されています。

高年齢雇用安定確保措置として①定年の引き上げ、②継続雇用制度の導入【特殊関係事業主による雇用も可能】、③定年の定めの廃止のいずれかを大企業・中小企業に関わらず、採用しているはずです。特に②の特殊関係事業主による雇用も可能というのは一定の資本関係がある事業主による雇用も可能になっているところに気をつけてください。

多くの企業が採用していると思われるのが、継続雇用制度ではないでしょうか。継続雇用制度とは現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続き雇用する制度です。代表的な制度としては再雇用制度、勤務延長などです。

継続雇用制度が導入された当初は労使協定によって高年齢者の対象者を限定することが認められていましたが、現在は高年齢者が定年後も雇用を希望する場合、65歳まで事業主に雇用義務が発生します。ただし、現在、平成25年3月31日までに労使協定で高年齢者の対象者を限定している企業だけが経過措置として存続しています。しかし、経過措置も令和7年3月31日までで終了します。理由としましては、令和7年4月から厚生年金保険の報酬比例部分が65歳から支給されることが決定しているからです。今回の法改正でも60歳代前半の高年齢雇用安定確保措置は継続されますので注意してください。

2021年の法改正のメインになるものが60歳代後半の65歳から70歳までの就業確保措置の導入ではないでしょうか。65歳から70歳までの就業確保措置として❶雇用による措置【法10条の2第1項】、❷創業支援等措置【法10条の2第1項但書、第2項】が法改正の柱になります。

❶雇用による措置【法10条の2第1項】は60歳から65歳までの高年齢雇用安定確保措置と同じです。原則形態は、雇用による措置となります。❶雇用による措置としては定年の定め【65歳以上70歳未満の者】をしている事業主または継続雇用制度【高年齢者を70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く】を導入している事業主は、その雇用する高年齢者について次に掲げる措置を講ずることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保するように努めなければならないと規定されました。60歳から65歳までは義務化ですが、65歳から70歳までは努力義務の規定になっています。

65歳から70歳までの安定した雇用を確保する措置としては①定年の引き上げ、②65歳以上の継続雇用制度の導入【他事業主による雇用も可能】、③定年の定めの廃止が設定されています。具体的に言えば、①定年の引き上げであれば、法改正で努力義務の設定になっていますが、将来は義務化されるので、定年70歳として定年を引き上げる方法です。②65歳以上の継続雇用制度の導入は70歳になるまで継続雇用制度を延長するような方法です。特に、【他事業主による雇用も可能】というのは、65歳までの継続雇用制度の箇所にも出てきましたが、65歳以降の継続雇用制度では特殊関係事業主にとどまらず、他の事業主であっても雇用の対象となります。その際に、他の事業主と契約を締結して雇用させる必要が発生してくると考えられます。③定年の定めの廃止は勇気が要りますが、定年制度を廃止して体力が続くまで働くことができるような方法です。

❷創業支援等措置【法10条の2第1項但書、第2項】は雇用による措置とは違った新しい形態になります。創業支援等措置を導入するにあたり、手続きが必要になります。創業支援等措置を導入するには、まず、労働者の過半数で組織する労働組合、あるいは、労働者の過半数で組織する労働組合がなければ労働者の過半数を代表とする者の同意を得る必要があります。

労働基準法に準拠したものにはなりますが、就業規則の作成変更とは違い、労働者の過半数で組織する労働組合、あるいは、労働者の過半数で組織する労働組合がなければ労働者の過半数を代表とする者の意見を聴くのではなく、同意を得ることが前提になります。

労働者の過半数で組織する労働組合、あるいは、労働者の過半数で組織する労働組合がなければ労働者の過半数を代表とする者の同意を得る手続きをとれば、雇用による措置を採用しなくてもセーフ、違反にならないということになります。

労働者の過半数で組織する労働組合、あるいは、労働者の過半数で組織する労働組合がなければ労働者の過半数を代表とする者の同意を得ると、①70歳までの継続的に業務委託契約等を締結する制度、②70歳まで(ⅰ)事業主が自ら実施する社会貢献事業、(ⅱ)事業主が委託、出資等を行う団体が行う社会貢献事業に従事することできる制度を導入することができるようになりました。社会貢献事業とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業を指します。①は外注に仕事が切り替わるといったイメージでしょうか。色々な会社で引き受られるというメリットがあります。②の(ⅱ) 事業主が委託、出資等を行うような場合には、しっかり契約を結ぶ必要がでできます。

特に、注意が必要なのものが、高年齢者が事業主等との間で締結する業務委託契約等は当該高年齢者に金銭を支払うものに限られます。ボランティアのような無償なものは、ここでは該当いませんので注意しましょう。

(2021.05.11更新)