2021年“脱ハンコ”が本格化!導入に便利なサービスと上手な移行の例


2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、デジタル化や脱ハンコ化への動きが大きく加速しました。紙ベースの書類は、データを出力して押印したり、封入して発送したりするなどの手間がかかります。そのため、緊急事態宣言下であっても、書類の受け取りや押印のために出社せざるを得ないという状況が問題視されました。

その流れを受けて、2020年10月7日の規制改革推進会議で、菅義偉首相は全省庁の行政手続きを対象に「押印廃止や書面・対面主義の見直し」に向けた方針を速やかに策定するよう指示。2020年11月13日の記者会見において、河野太郎行政改革担当大臣は、行政手続きにおける認印の押印を全廃すると発表しました。

2021年4月1日には改正された施行規則が施行される予定です。行政手続の中でも、次々に押印廃止が決まっています。身近なところでいうと、残業について取り決めている36協定では、法令上、使用者及び労働者の記名押印または署名を求めないことになりました。

2021年9月にはデジタル庁の発足も控え、今後ますます手続きのデジタル化、脱ハンコ化は進んでいくと思われます。

脱ハンコ化のメリット

民間企業でも、文書による契約を廃止し、原則電子契約に切り替えると公表している企業が増えています。次々とハンコレスの会社が増加している理由は、生産性向上というメリットが大きいためです。

例えば、人事採用の現場では、対面で労働契約を交わした後、双方が押印し、手入力でデータを打ち込んだり、本部へ原本を郵送したりする時間が必要でした。

雇用契約書を電子契約に切り替えれば、契約書の作成や印刷、双方の押印、郵送など最低でも1週間はかかっていた契約事務処理のスピードを大幅に短縮することができます。

郵送や印刷にかかっていたコストも削減可能ですし、クラウド上でデータを保存するため、保管のスペースもとりません。書類のファイリングや検索といった事務処理も簡素化できるのもメリットです。経理や人事担当者のテレワークも捗ることでしょう。

脱ハンコの注意点とおすすめのサービス

電子契約化によるメリットは多い一方で、注意しなければならない点もあります。そのひとつが、契約としての証拠力をいかに担保するかという点です。

顧客や労働者との間でトラブルになった際に備え、双方の合意内容が法的証拠として利用できることが重要になります。そのためには、改ざんを防ぎ、原本性が主張しやすい「電子署名」が付与されているサービスの利用がオススメです。

電子署名とは、紙文書におけるサインや印鑑に相当するもの。電子署名を行うことで、「いつ」「誰が」作成したものであるかを明らかにすることができます。

電子契約を利用している企業の約80%が導入しているサービスが、弁護士監修の電子契約サービス『クラウドサイン』です。クラウドサインで合意締結されたすべての書類には、クラウドサインのみが発行可能な電子署名が付与されます。

また、合意締結時に、弁護士ドットコム株式会社名義で、書類の概要や合意締結の日時などが記載された「合意締結証明書」が発行されます。誰が・いつ書類をチェックしたかという記録も確認できるため、ハンコなしでも安心して契約することができます。

脱ハンコのための具体的なステップ

実際に会社で脱ハンコ化を始めようと思ったら、どのような手順で進めれば良いのでしょうか? 全国でもトップクラスの早さで「脱ハンコ完了」の宣言を出した福岡市役所の例はとても参考になると思います。

福岡市役所は、窓口が混雑するという不便を解消するために、平成31年ごろから、「原則押印廃止・オンライン化」の前提で、押印の見直しを進めていました。彼らが最初にしたことは、総務課で書類を押印が必要なものと、そうでないものに仕分けることです。

国や県の法令で押印が義務づけられているもの、印鑑証明書の提出を求めているものなどは、押印を省略できません。反対に、押印が必要だと明文化されていないにも関わらず、なんとなくハンコを押す慣習ができている書類もあります。

福岡市役所はこれらを仕分けしていき、担当部署と調整しながらハンコレスを進めていきました。基本的に紙の様式はそのままで、押印欄を消去するか、押印欄は残したまま、欄外に「自署の場合は押印不要」などの注記を加えるといった方法で対応した結果、ほとんど問題なくハンコレスが実現できました。

その結果「窓口で印鑑を忘れても、自宅に取りに帰る手間が無くなった」と喜ばれ、窓口の混雑も低減したそうです。

このように、社内外の文書に対して、「本当にハンコが必要なのか?」という視点で整理していくことが第1のステップです。ハンコが不要なものに関しては、自著や電子署名といった形で対応策を考えていくのが第2のステップ。そのことを社内の労働者や、クライアント、協力会社などにも周知し、理解を求めることが第3ステップとなります。

最初に導入するのは大変ですが、慣れれば間違いなく生産性が上がります。また、時代の流れも確実に脱ハンコへ向かっているので、できるところから少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか?