高年齢者雇用安定法 法改正情報②
2021年の法改正のメインになるものが60歳代後半の65歳から70歳までの就業確保措置の導入ではないでしょうか。65歳から70歳までの就業確保措置として❶雇用による措置【法10条の2第1項】、❷創業支援等措置【法10条の2第1項但書、第2項】が法改正の柱になります。新しい形態でもある❷創業支援等措置【法10条の2第1項但書、第2項】を見てみましょう。
❷創業支援等措置【法10条の2第1項但書、第2項】を導入するプロセス【規則4条の5】として高年齢者雇用安定法規則も改正されました。創業支援等措置を実施する場合には、①計画の作成、②労働者の過半数で組織する労働組合、あるいは、労働者の過半数で組織する労働組合がなければ労働者の過半数を代表とする者の同意、③労働者への周知のステップ・手続を経る必要があります。ステップをそれぞれ見ていきたいと思います。
ステップ1:①計画の作成
創業支援等措置を講ずる理由、高年齢者が従事する業務内容、高年齢者に支払う金銭に関する事項など、所定の事項を盛り込んだ計画を策定する必要があります。
ステップ2:②過半数で組織する労働組合または過半数を代表とする者の同意
創業支援等措置を講ずる計画について、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合または過半数を代表する者の同意を得ることが必要です。あくまでも就業規則の作成・変更のように意見聴収ではありません。同意を得ることを忘れないでください。
ステップ3:③労働者への周知
事業所の見やすい場所への掲示、備え付け等、所定の方法で労働者に周知させる必要があります。周知方法としては、書面を交付する、あるいはウェブ端末で見られるようにしてあれば足ります。
次に65歳から70歳までの就業確保措置を導入するにあたり、高年齢者就業確保措置の対象者を絞りこむことができるかどうかは聞きたいところではないでしょうか。一応、昨年10月30日付で厚生労働省から「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」、ガイドラインが出ています。それを参考にすると考え方が導き出せるかと思います。
①高年齢者就業確保措置は努力義務の設定になっていますので、高年齢者就業確保措置の対象とする高年齢者の基準を設けることは可能です。つまり、努力義務であるので、法的義務ではありませんので、高年齢者就業確保措置の対象となる高年齢者を絞り込むことは可能になります。
②労使間で十分に協議の上、企業の実情に応じた基準を策定すべきであり、労使の合意が尊重される必要があります。対象となる高年齢者を絞り込むことはできますが、その際には労使間で協議をして、企業の実情に応じた基準に合うものを設定してくださいということになります。
③法の趣旨やその他の労働関係法令、公序良俗に違反するものは当然、認められません。対象となる高年齢者を絞り込み、労使間で協議して合意まで取り付けました。外見上は合意があり、書面も締結されていても、法の趣旨に反しているような場合は認められなくなりますので、慎重に進める必要があると思います。
ガイドラインの「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」に基づいて高年齢者就業確保措置を導入に伴い、賃金・人事処遇制度の見直しが必要な場合が出てくるかと思います。「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」では下記の点に留意が必要としています。紹介しきれないので7点ほど留意点をあげておきたいと思います。
①年功的な賃金・処遇制度から、能力、職務等の要素を重視する制度への見直しに努める。
②賃金・報酬は高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、業務内容に応じた適切なものとなるように努める。
③短時間勤務、隔日勤務など、高年齢者の希望に応じた就業が可能となる制度の導入に努める。
④契約期間を定めるときには、70歳までは契約更新ができる措置を講ずるように努め、またその旨を周知するように努める。
⑤職業能力を評価する仕組みの整備とその有効活用を通じ、高年齢者の意欲・能力に応じた適正な配置、処遇の実現に努める。
⑥勤務形態や退職時期の選択を含めた人事処遇について、個々の高年齢者の意欲・能力に応じた多様な選択が可能な制度となるように努める。
⑦事業主が導入した就業確保措置の利用を希望する者の割合が低い場合には、労働者のニーズや意識を分析し、制度の見直しを検討する。
簡単に補足するとすれば、①であれば高年齢者の会社での仕事やり方を見直してみる。
②であれば高年齢者の置かれている環境に違いがあることを考慮してみる。③であれば
高年齢者になる体力的にフル出勤ができないということであれば、短時間正社員に変更するなど希望に合うように見直してみる。④であれば可能な限り、70歳までは契約更新できるように見直してみる。
⑤については異論がありません。⑥であれば、制度・メニューを用意してあげて色々選べるように見直してみる。⑦制度を導入後に、あまり制度を利用する高年齢者がいない場合であれば、もう一度、制度自体を見直してみる。
以上が留意点になるかと思います。