”弱さ”とはつまり、”関わることのできる余地”のことである <自然経営シリーズ 第4回>
<有限会社人事・労務 設立20周年記念セミナー基調講演より>
働きやすい職場はどのように作られるのか?
イノベーティブで協働的な組織のあり方とその実践について研究を行っている埼玉大学大学院の宇田川元一先生の講話をもとに、コントロールを排除した、より自然体な経営スタイル「自然経営」のあり方について考えてみた。
第1回:人がつながるプラットホーム、コラボレーティブコミュニティとは?
第2回:”勇気を持たなくても言い出せる”組織の作り方
第3回:「貢献感」で会社と社員をつなぐ
第4回:”弱さ”とはつまり、”関わることのできる余地”のことである
第5回:弱さが強さに変わる組織
<”弱さ”とはつまり、”関わることのできる余地”のことである(第4回)>
いま、多くの会社の上司の役割や制度は、スタッフをコントロールし競争させることを促すカタチになっている。
では、どのようにすれば、スタッフ同士に協力を促し組織としてのパフォーマンスを高めることができるだろうか?
上司像として宇田川先生の話の中で大きなヒントとなったキーワードは「弱さ」である。
具体的には「弱さの語り」を上司が実践していくことについて、ある会社の事例をもとに紹介いただいた。
ある企業の話はこうだ。
ワークショップをしてその場では盛り上がった。
しかし、何となくきれいな話をして終わって帰ったような気になってしまった。本当に語るべきことが語られていないと感じたというのだ。
では、どうしたら語るべきことが語られる場を作ることができたのだろうか?
宇田川先生のアドバイスはこうだった。
「どうしたらいいか分からない」ってことを伝えたらどうですか?(まさしくこれが弱さの語り!)
恊働する組織とは、あっちの人とこっちの人とを分けない組織と言えるかもしれない。一緒に考えて、一緒に働いて欲しいのだ。
作ってあっち側に提供する、おもてなし型のマネジメントではなく、当事者に巻き込むマネジメントスタイルが恊働には必要なのだ。
●当事者以外は当事者意識を持つことなどできない
では、当事者意識をもってもらうためにはどうすればよいだろうか?
宇田川先生は、「当事者じゃないひとに当事者意識を持ってもらうことなどできない」と語る。
「正解が出せなくて苦労している・・」、この弱さの語りをしていくことで他の人が関わる余地が生まれる。
”弱さ”とはつまり、他の人が”関わることのできる余地”のことであり、一緒に働いてもらいたいのであれば、そこには余白(弱さ)が必要なのである。
何も、ずっと弱さを語っていろと言っているのではない。上司一人で抱え込み、答えが出せずにいるのにそれを隠し、また、絶対的な自信が無いのに確信があるように決断をし、引っ張っていくことだけがリーダーのあるべき姿ではないということだ。
大切なのは組織としてのパフォーマンスを発揮することだ。
迷っているのなら、メンバーの力をかりればよい。ここは!というときには、前に出てメンバーを引っ張ることも必要だろう。
スタッフにとって組織の中でパフォーマンスを発揮できることは喜びである。
上司が弱さを見せることは、スタッフが貢献感を感じるきっかけを与えることでもあるのだ。
著者:原田真吾 WorldShihtコミュニケーター/社会保険労務士有資格者/