これからの時代のコミュニティ経営「コミュニティシップ3.0」とは
いま、「人的資本経営」という言葉が注目されています(上場企業は2023年3月期決算以降は有価証券報告書にて人的資本の情報開示)。
これからの持続的な経営を考えると中小企業においても人的資本を大切にした経営を推し進める必要があると言えます。
人的資本経営における社会関係資本と心理的資本の重要性
まず、「人的資本」について考える時に、あわせて社会関係資本・心理的資本というものに着目したいと思います。
働くひと、の力をいかに引き出すか、という心理学分野での研究でまず注目されたのが「人的資本」です。「何を身に付けたか」という知識やスキル、経験などを重視するものです。
次に「社会関係資本(Social Capital)が注目されます。社内外のネットワークや人脈など「誰を知っているのか」を重視する考え方です。
そして今「心理的資本」が注目されています。ポジティブ心理学という視点から、”仕事に熱中しイキイキと働く状態がパフォーマンスにも好影響を与え業績にも影響していく”というものです。
個の心理的資本が豊かであれば、知の探索・深化が促され社会関係資本が豊かになり、その接点を通して知識・経験を豊かにでき、人的資本も高まっていくと言えるので、人的資本経営を考える上では心理的資本が土台になってくるわけです。
新たな時代のコミュニティシップ-コミュニティシップ3.0の必要性
ただし、ここで注意したいのが、「コミュニティなき個人」「行き過ぎた個人主義」になっていないかどうか、ということです。
かつての日本企業が右肩上がりの成長を遂げたのは「コミュニティシップ」にあった、というのは、アメリカの経済学者ヘンリー・H・ミンツバーグさんが研究で明らかにしたことで、「人々が力を合わせて協働しながら好ましい結果を生み出す姿勢」を指します。
それは、つながりから生まれる”個の有用感”を大切にした姿勢であり、社員と社員の交流、お客さまとの交流、地域との交流から生まれる「動的な流れ」として育まれるものです。
しかし日本は、その後のバブル崩壊を経て、成果主義、グローバル化が進み、かつての共同体的組織が崩れ、行き過ぎた個人主義が分断を生み出すことにもなりました。
いま求められているのは「新たな時代のコミュニティシップ(コミュニティシップ3.0)」です。
SNSやリモートワークなど” ”遠隔でもつながれるWeb技術”が進化している中、”身体性を伴ったつながり”を感じながらそれぞれが持ち場で協働し、問題解決・価値創造にあたっていく姿勢を、新しいコミュニティシップ=コミュニティシップ3.0 と位置づけ、働く一人ひとりが大切にしていく必要があると言えます。
コミュニティ経営に向けた新たな文化の構築
そのためには、一人ひとりが「愛してやまないことを創作していく素質をもった」存在として、お互いリスペクトし合い、信頼をベースとした関係性を築きリスクを背負ってやってみよう!と一歩を踏み出していく文化をつくっていくことが重要です(ソース・プリンシプル)。
また、人的資本を見える化するためにKPI設定が大事等々と言われていますが、そのような「結果」の部分だけでなく、「プロセス」を見える化することが必要です。
具体的には、どれだけのナラティブが職場で生まれているかを把握していくことです。それらのナラティブを、ストーリーとして表に出していくことが重要で、これは、若手世代の採用にもつながると言えます。
だからこそ、中小企業こそ「コミュニティ経営」を実践していくことが大切なのです。