まずは見極めポイントを確認!再建できる可能性が高い企業の特徴6つ
一口に会社再建の手法といっても、債務のリスケジュールをはじめ、協議等による解決(私的整理の方法)、法的手続(民事再生、会社更生、特定調停)による解決など、利害関係人を調整するさまざまな方法があります。また、会社再建には、代表者の連帯保証の問題があることも多く、会社の再建だけを考えればよいわけでありません。代表者の連帯保証の債務整理の手法も複数あります。
ここでは、このような再建手法を検討する前提として、再建可能性の有無を見極めるためのポイントについて説明いたします。
会社再建できる可能性が高い企業の特徴
1:経営者の事業継続意欲が高い
任意整理の方法による場合はもちろんのこと、民事再生手続においても、従前の経営者が経営を続けることになるのが通例です。
そのため、経営者の事業継続意欲(要するに社長のやる気が)ないとどうにもなりませんし、高齢で後継者がいないというような場合も、再建は難しいといえます。
経営者の事業継続能力が高いことが、再建の可能性を判断するうえで重要なポイントとなります。
2:優位性の高い事業がある
例えば、業界全体が斜陽化しているような場合、再生は容易ではありません。また、労働集約型産業のように、業界全体が安価な労働力を求めて海外に生産拠点をシフトしつつあるとか、取扱商品がすでに陳腐化していて需要自体が減少傾向にある場合では、いくら債権者の協力があっても、収益性の改善が見込めず、再生計画の実行が結局不可能とります。
商社的な業態で、自社に取って代わる業者がいくらでもあり、その会社が消滅しても、得意先や仕入先が困らない事業も、再生が困難といえます。このような場合、得意先は、商品供給が円滑にされるかどうかを心配しながら自社と取引するよりも、他社から仕入れた方がよほど安心ですし、仕入先も再建中の会社の二次破綻を懸念して取引を躊躇する可能性が高いからです。
これに対し、特殊部品の製造会社で、その企業が消滅してしまうと、ある商品の生産が困難になるなど、業界で不可欠とされている会社や競業他社が少ない会社は再建可能性が高いといえます。
3:本業が儲かっている
本業の収益性が乏しい場合や、どれだけリストラをしても近い将来において収益性を維持・向上させる見通しが立てられない場合、会社再建は難しいと言わざるを得ません。再建するといっても、過去の負債の一定割合の支払をしなければならない以上、余剰資金がないと、この支払ができないことにもなりかねないからです。
収益性の判断にあたっては、会社の損益計算書のうち営業収支の欄を見れば、本業が儲かっているのか、いないのかがわかります。営業収支レベルで黒字の企業であれば、まずは会社再建の見込みがある企業といえるでしょう。また、営業赤字であっても、減価償却費の数字の方が営業赤字の額よりも大きければ会社再建の見込みがあるといえます。
これに対し、減価償却費分と営業赤字額を比較して、それでもキャッシュフローが維持できない場合は、少なくとも不採算部門は切り離した上で、再生を図るほかないといえるでしょう。
4:先行投資による資金逼迫など経営悪化が一時的
どのような理由から経営が悪化したのか、その内容次第では経常黒字化が難しく、再建が困難となりかねません。
典型的には、本業の収益が上がらず、ジリ貧となって経営悪化に至った企業であれば、たとえ負債をカットしても結局収益を上げられないため、再建は難しいといえるでしょう。
これに対し、例えば、大口の不良債権の発生があって一時的な資金逼迫が生じた会社であるとか、本業の収益性は高いが本業以外の投資あるいは投機に失敗した会社、開発の先行投資が実を結ぶまでに資金繰りに窮してしまったが、画期的な新規商品開発が目前である会社などの場合は、一般的に再生が容易であるといえるでしょう。
5:数ヶ月分の資金繰り目途が立つ
会社再建を行う場合は、3ヶ月分(少なくとも2ヶ月分)の運転資金は確保しておきたいところです。民事再生の申立後は手形割引や融資が困難となりますが、他方で仕入代金等、取引先に対する支払は現金払いが原則。人件費の他、電気・ガス・水道・公租公課も現金で支出せざるを得ないため資金繰りが逼迫する可能性が高くなるためです。
経営が行き詰まった段階で、担保化されていない商品や売掛金のほとんどが処分または回収されており、流動資産が少ない場合は、申立後の資金繰りの見通しがつかなくなり、再生を諦めざるを得ない場合もあります。
6:支払いを取引先が待ってくれる
メインバンクや取引先等の理解が得られることも重要なポイントとなります。取引先の協力が得られるだろう、取引先としても理解せざるを得ないだろうとの見込みがあれば再建に踏み切りやすいといえます。
一方で、例えば、債権カットを受け入れさせると仕入先が連鎖倒産してしまうような場合には、理解が得られるはずもなく、その仕入先に取って代わる取引先を見つけ出さなければなりません。また、大口取引先が離反することが確実な場合も再建が困難といえます。
これに対し、取引先の理解が得られる場合はもちろんですが、関連会社などからの支援や、スポンサーの支援がある場合は再建しやすいといえます。
なお、企業内の労働組合活動が活発な場合や、健全な労使関係が構築されていない場合には、人員整理や退職金に関する労働争議を引き起こしやすく、再建が頓挫する可能性が高いといえます。
上記のポイントは、すべてを満たさなければ再建できないというものではありませんが、多くを満たしていることで再建がより容易になります。また、満たしていない点について何らかの手当があれば再建は比較的容易になるものと思われます。
企業の再建は、その企業の将来の状況や関係者の協力の有無にも影響され不確定要素も多いため、開始時点で再建の成否を読み切ることは困難です。上記のポイントをご参考に、自社に当てはめながら再建の可能性を検討されることをおすすめいたします。
執筆者: 藥師寺正典 / 2021.06.15掲載