シニアと若手双方が活躍できる会社とは?


みなさん、こんにちは。人事労務の山﨑です。
11月に入り、すっかり寒くなってきましたね。

11月4日に東京都中小企業振興公社主催の人材実務セミナーで 弊社の畑中・金野がZOOMにて講義させていただきました。

今回のテーマは
「シニア人材の活躍と若手人材の育成を融合する仕組みづくり
シニアと若手双方が活躍できる会社とは」です。

<Chapter1> として「シニア活躍の課題と戦力化のポイント」について話しました。

ここからは、 今回二人が話した内容の中でポイントになる部分をお伝えします。

<中小企業の課題と押さえておくべき各種制度>
前半、畑中から中小企業の課題と押さえておくべき各種制度について話しました。

日本の賃金制度では定年前まで賃金が上昇または横ばい、定年後の継続雇用の際に賃金が下がる、という賃金スタイルが一般的ですが、この賃金カーブが多くの課題をもたらしている可能性があります。

具体的には
・これから高齢者が増えていく中、定年前まで賃金が上がり続ける給料を会社が維持できるのか。
・入社時の給料が安いことで、若手人材の確保・定着が困難。
・定年後に雇用されている高齢者のモチベーション、また同一労働同一賃金の観点から問題はないのか。 等々

様々な課題がある中、その課題に対しての対応策も模範的なものがあるわけではなく 各会社それぞれの事情に合わせて様々になってくると思います。
ただ、共通認識を持っていたいポイントを下記に講義の中からピックアップいたします。

・高年齢者雇用安定法の法改正
→来年4月より70歳までに就業機会確保が努力義務となります。

現在の65歳まで継続雇用義務は引き続き残り、あくまで努力義務ですが、70歳まで働く機会を提供できるような体制を考えていく必要があるでしょう。

・在職老齢年金の見直し
→細かい部分はありますが、働きながら年金を受け取る方で年金額とお給料の合計が一定額を超えると年金がカットされてしまうのが在職老齢年金です。

現在、その合計額は28万円でしたが、令和4年4月より47万円に引きあがります。

つまり、働く意欲はあるが在職老齢年金を気にして労働時間や業務量を調整する、という方が少なくなる見込みです。

■同一賃金の観点から4点

・役職定年・役職任期制度
→実態に応じて柔軟に対応することが可能になる。

・メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ
→人を成長させて、仕事をつけていくという雇用の形から今ある仕事に人をつけるという雇用の考え方。

・職能給から職務給へ
→職能給の場合、能力が下がったことを証明するのが難しく、つまり賃金は上昇し続けてしまう場合が多い。

上記のようにポイントを述べましたが、前半のまとめとしては

これからシニア世代の継続的な雇用と活躍、またこれからの会社を担っていく若手の確保・成長において今まで当たり前であった制度や規定を見直し、再検討していく必要があるでしょう。

<シニア活躍に向けた組織の土壌づくりのポイント>

後半、金野からは前半の高齢者雇用の制度面や法改正などを踏まえた上で、シニア活躍に向けた組織の土壌づくりのポイントを話しました。

新人と話がかみ合わない、シニアの管理職に今の意見を分かってもらえないといった声がありますが、そもそも前提として「シニア社員と若手社員」という分け方が正しいですか?という問いから始まります。

わたしたちはどうしても組織の分断を「世代」で捉えがちということを念頭に置いて、異なりは本当に世代によるものなのか疑いましょう。
組織を「世代」で分断せず、背景・経緯・文脈など目に見えない状態・事象の存在の理解が必要ではないでしょうか。
この目に見えない存在の扱い方について、組織開発を専門としている金野から、関係性をよくするための働きかけとして「ワールドカフェ」や「フューチャーサーチ」といった手法を提案し、また実際に実践している会社の例をお伝えしました。

また一方で、「世代」を無視すれば上手く回るのか、といった話ではなく、それぞれの世代による特性・志向性に興味を持つ必要もあるでしょう。

例えば、ウルトラマン世代(主に40歳以上の方)とポケモン世代(それ以下の年齢の方)といった育った環境の中で見てきたアニメの違いによる世代の分け方があります。
ウルトラマン世代は、敵を倒すという「目標達成までの過程は気合と根性重視」の志向が強いですが、ポケモン世代は、はっきりとした敵はいなく、多様なモンスターと遊び、育っていくため「皆で共生しながら世の中を創り上げる」志向が強い傾向があります。

他にも、バブル世代、就職氷河期世代、ゆとり世代など様々な世代による括りがありますが、その世代の背景に興味を持って理解することで、スムーズな意思疎通が行える場合もあります。

ただ、その世代は個人の集合体で形成されており、世代という大きな括りはありつつも、やはり個人的な内的動機は皆異なります。

後半のまとめとしては、組織の全体構造や人員構成をしっかり観察し、また“個人個人の内的動機を把握する”といったことがポイントとなります。

前半・後半全体を通じて、
現行の制度、規定の理解またその見直し、また世代の特性も把握する、という全体的な目線も持ちつつも、世代だけで一括りにしない個人個人への理解という二つの目線を持ちながら各会社それぞれシニア・若手双方の活躍について考えてみていただけたらと思います。