つながりを見える化する「ソシオグラム」とは?Vol.1
まず前提としてお伝えしたいのは、”ソシオグラムを作成することはネットワーク分析をすることを意味する”ということです。
ハピネス5においては、コミュニケーション指標を見る上で、「ありがとうカード」の導入をしています。そしてオプションとして、ありがとうカードのやりとりから見える皆さんのディスカッションネットワークをソシオグラムとして出力することにより、現在の組織の関係性の見える化をさらに推し進めます。
組織開発は、その会社(組織)に所属するヒトの ①個々人の発達段階と ②その個人がどのようにつながっているかを考え、「組織が今、どのような段階にあるのか」(自律分散型組織の発達段階についてはフレデリック・ラルー氏が「ティール組織」(2018年1月23日発刊)について体系化されております)を把握し、「次にどのような手法で組織開発を進めていくべきか」というプランの作成が不可欠です。
理想も大切ですが、そこに至るプロセス(人事施策)は、組織ごとにその段階に応じた優先度や必要性の吟味と選択が必要になるでしょう。
さて、ネットワーク分析は広く「あるものとあるものの関係性を見る」ために発展し、その結果、ソシオグラムというグラフを作ることで集団や個の特性を見る社会学の分野の一つです。この点、「人と人とのつながり」自体を一つの社会的資本ととらえ、組織開発の分野にも応用されてきました。
日本ではあまり研究が進んでおりませんが、1980年代からミシガン大学のNOCRが主催するGSSにおいて米国全土で人と人とのつながりと属性をみる調査が行われてから、個人のライフ・ワークスタイルを個人の資質や能力だけでなく人とのつながり(パーソナル・ネットワーク)の研究は続いております。
ハピネス5のネットワーク分析は組織に属するヒトとヒトとの関係性をネットワーク分析により見える化し、その組織の状態(ひいては発達段階)や秘めたイノベーションの可能性を発掘します。
職場における「影響度」をはかる
縁か運か、戦略か偶発か、仕事・人生のあらゆる場面で人間関係は人の選択に影響を及ぼします。
社会ネットワークの研究者の中には「人間関係がその人の行為を決定する」とするほど、ヒトとヒトとのつながり(パーソナル・ネットワーク)はその人の今後の可能性に影響します。
ヒトとヒトとのネットワーク効果として著名なものの中に社会学者グラノベッターの「弱い紐帯の強み」があります。彼は、人のキャリア形成の研究で転職の際によい仕事が普段付き合いしている人より付き合いの浅い人から多くくる、ということを提唱しています。
この点、ハピネス5からはかるソシオグラムにおいては、「ありがとうカードを送った相手がありがとうカードを送った相手の数」、対象とする個人からソシオグラムで見て2ステップで到達するヒトが何人いるか、ということを「影響度」という指標で数値化します。
グラノベッターの提唱する「弱い紐帯」の理論にのっとれば、この「影響度」が大きい(弱い紐帯が広く展開される)人ほど、新規で異質な情報や資源に出会いやすい、可能性に満ちた人材であることがわかります。
つまり、ハピネス5は、組織のもつ「隠れたイノベーター」を発掘するとも言えます。
また、この影響度について、マサチューセッツ工科大学の2008年の研究(ある企業の営業部署を対象にITシステムの見積もり対応の結果について1か月調査(案件900件ほど)した研究)では、自分の知り合いから知り合いまで何人いるかをみて、単純な知り合いのいる人より、この影響度が高い人の方が、顧客からの問合せに対応する(想定外の複雑な問題に対処する)ことができた、と出ています。このことから、課題解決能力の高い人材を発見することにもソシオグラムは効果的に使えると言えるでしょう。
弱い紐帯の強み、の話にも通じますが、この影響度でつながっている人(2ステップの弱い紐帯)同士であえて集まり、会議を行うとどうなるでしょうか。
弱い紐帯の関係は強い紐帯よりも他の場面では得にくい情報や機会に恵まれ、画期的なイノベーションが起こりやすいと言われています。
組織開発の議論も、強い紐帯の中でのみ施策を議論しても画期的なアイディアに恵まれない可能性が高いです。そこであえて弱い紐帯で組織とつながっている人を会議で主役にすることで、新しい情報や刺激がもたらされ、組織の中にある「見えない暗黙知」が顕在化することが起こりえます。また、組織の運営を民主化していくことを組織開発上の課題と設定するのであれば、この弱い紐帯の強みは組織のフラットな関係づくりを進めるうえで重要な「集合知」を得る機会になるでしょう。
もちろん、弱い紐帯の強みが経営企画や営業会議にもイノベーションをもたらすことはいうまでもありません。
この、「イノベーションの起爆剤」となる隠れたキーパーソンをハピネス5のソシオグラムは見える化するのです。