社員のやる気につながる人事制度改革①
今回は、日本賃金学会広島大会での弊社矢萩の学会発表より「社員のやる気につながる人事制度改革」をテーマにお伝え致します。
■ES組織開発で業績アップ
今回は学会発表での具体的に業績が伸びた会社のES組織開発の取り組みについて解説していきたいと思います。
まず、要約いたしますと、繋がりの質を高めることが組織開発の大きなテーマです。
幸福学で定評のあるアドラーの心理学というのを皆さんはご存知でしょうか?
アドラーの考えをベースに繋がりの質を高める試みを社内に働きかけていくことです。
例えば
(1)トータル・リワードの人事制度、賃金以外の報酬を分配する方法
(2)個人からチーム評価への重視
(3)チーム評価の導入
(4)ICTの導入によって目標管理・人事考課に対して、
データによるリアルタイムフィードバック
(5)健康経営の面から、社員個々人のマインドの見える化
の5点を実践してまいりました。
さて、少し詳しく見ていきましょう。
実際、社労士の先生でおなじみの大学の先生で、青島先生という方が仰っていますが、組織開発の出発は
人事制度や目標管理等ハードの精度を導入する前に、まずコミュニケーション、相互の協力関係を築くということが大切です。
私たちはすぐにハードから人事制度や目標管理制度を導入しようだとか、アイデアをどんどん出してもらうというようなことになってしまいますが、
その前にやっておくことは、青島先生の論文では、まずは職場のコミュニケーションというところからやっていくべきではないかと。
例えば、職場で間違ったことを言っていたとしても、職場の雰囲気が良ければ、いいように解釈をするし、逆にロジカル的には正しくても、この人とソリが合わないとなると、マイナスの面として職場の中に通じてしまう。
コミュニケーションというところから、やっていくべき点はこんなところにあるのです。
■職場コミュニケーションの見える化ワーク
その1つの方法として、吐き出しワークというのがあります。
コミュニケーションをイラストで表現するワークです。
職場の悪い習慣や、職場の困った問題等を社員全員で話し合うなんてところをやっていて、コミュニケーションの状態と、マネジメントの状態がどうなっているかを絵に表現してもらうのです。
これの良い点は、普段言いにくいことも、例えばコミュニケーションワークでは、リーダー、部課長の方々が前に出て演説をしているだけの形になってるということや、マネジメントの方も上から目線で部下を見ていて、ただ業務を流すだけで責任を放棄、混乱しているよなんていう話も絵を見ながら言いやすくなるのです。
文字で書くよりも絵で表現することによって、微細な説明もでき、職場の雰囲気が伝わってくるのです。
次は、社員の内的な動機に着目するということをうちは大切にしてやっております。
■はたらく価値の最大化・心の火種ワーク
これからは働く人の働く体験価値の最大化ということになってきますと、その人がなぜこの職場にいて、何が楽しいのか、幸せを感じるのか。
どんな時にワクワクするのか。その人に合った報酬はなんなのか。
こんなところは、実際にヒアリングをしながら、深く入り込んでいく、いわばディプスインタビューと言いますが、深く入り込んでいかないと、なかなかそれは表面には出てこないと思っております。
今回の学会での事例では、内的動機にアクセスしていこうということで、心の火種マップをやって、その人の数十年間の体験の中で、どんなことにワクワクしたのか。そこをもとにして、そこから共通のところを見出していくのです。
例えば、実際の例として、保育園の給食の担当をしている女性の方です。
料理がすごく好きなんだけど、なんかモヤモヤして、あまりモチベーションが上がらないと。別に職場に何の問題もないと。
なぜなんだろうというところで、合宿に来ていただいて、このワークをやっていただきました。
この人の学生時代や今の働きを見てみると、人とのつながりだとか、人の役に立ちたいだとか、チームワークだとか、そういうところにワクワクするポイントがあるとわかってきました。
どうも、この人がモチベーションがなかなか上がらないのは、給食で美味しいものを作っても、子どもたちが食べる姿を見たことがない、ここが実は自分自身がモチベーションを感じられない。
料理は作ったけれども、実際には、その料理を食べている子どもたちの姿を見ていない。こんなところが、繋がりが感じられない。
それだったらもっと、そういったことを園長先生に話してみようとか、自分自身の働き方を変えてみようとか。
実際にはフードコーディネーターを取ってみようなんて、そんな話になってきたんですが、こういった内的動機に
アクセスすることによって、この人の価値観は一体何なのかな。
なぜこの職場にいるのかな。この職場ではいったい何をしたいのか。
それをどのようにするのか。WHYから始まるのを大切にして、その人自身の従業員満足、ワークエクスペリエンスを高めていこうなんていうところから、人事制度を作り直しているところです。
■金銭以外の報酬を人事制度に組み入れよう
報酬のお話なんですけど、そうしますと色んな報酬の方法の出し方があるんじゃないかと。
今までは賃金だけだったかもしれないけど、社外で研修をしたい。
海外で留学をしたい。
その人の欲求、モチベーションでは特別休暇や有給休暇がさらにほしい。
こういった色んな実が報酬と言うものを用意をしておくのが、1つの形になるのかなと思っています。
この辺りは、チーム評価の中でポイント制にして、そのポイントをいろんな報酬でもらえるようにしています。
使わない人は1ポイント1,000円で換算をして、その人のチーム給に上乗せする方法をとってますけど、
この部分の20%の部分は、このような報酬で、分配する方法をとっていまして、基本的には3年間ポイントは
持ち越しをするということです。
実際、これを使って2週間モロッコに行って、山登りに行ってきたメンバーや、うちでも実は導入してるんですけど、ラオスまで行ってきたメンバーや、こんなものを使いながら、新しい報酬制度を実施しているところです。
これからの中で1つ大きな課題としては、ミレニアムの台頭というところで、
働く意識の変化がすごく起きていると思うんですね。
1982年代以降の生まれの方です。私自身も残念ながら全く理解できませんし、今回は学会発表ということで大学の先生が大勢いらっしゃるので、若い人と接する機会はおそらく皆さまの方があると思うのですが、かなりその世代の持っている価値が変わってきています。
ダイバーシティというと、社労士の業界でも、男性、女性だったり、お年寄りの方、若い方、障がい者だったり、
いろんなそういった競争のダイバーシティというところなんですが、深層の深いダイバーシティとしては、こういったミレニアムというところをしっかりと我々も柔軟に受け止めていきませんと、難しい時代になってくるなと。
1982年の方々って言うのは、あとしばらくしますとマイノリティからマジョリティになってきますから、こういった人たちを、いかにマネジメントしていくのかが大切な視点になっていくのかなという風に思っております。
■ミレニアル世代の価値観とダイバーシティ
これは、デロイトミレニアル調査2016によると、昔であれば、昇進やリーダーになるところが1番上だったわけですね。
しかし今では適正なワークライフバランスというのを若い人が求めるんですね。
大切な視点になっているというところで、このあたりを着目していきませんと、人事も動いていかないんではないかというところがあるという風に思っております。
これからの人事制度というのは、そういった人事制度を導入して最終的に、エクスペリエンス、最終的に従業員満足を高めるには、
どうすれば良いのかなというところからシステムを作っていくというところで、社員の皆さん1人1人の働く体験価値というものをいかに最大化していくのかというところから、人事制度を作っていくべきではないのかなという風に考えております。